副業で「AV女優」を選ぶ女性が増えている 銀行員、生保レディたちの生の声
「外回り行くふりして(AV撮影の)現場に行ってました」と元生保レディ。銀行の窓口のお姉さんは「最初は不安だったんですが、一切バレる感じはないですね」-。今、企業などで働きながら「兼業・副業」としてAV女優を選ぶ女性が増えているそうです。そんな女性たちの生の声を集めた「『副業』AV女優-ふたつの顔を持つ女神たち」が27日、彩図社から出版されました。どういう人が、なぜ??AVライターの豆あきさんとの共著者で、銚子電鉄の「まずい棒」や「離婚式」などのプロデュースで知られる文筆家、寺井広樹さん(38)=神戸市出身=に聞きました。
【「知らない世界を見てみたい」アイドル化で減る抵抗感】
-本を出すきっかけは?
「最近、AVの動画サイトを閲覧していて、知人女性が出演しているのを見つけたんです。彼女は本業でバリバリ働いていたはず。でも、意外に多いのかもとリサーチすると、大手企業のキャリアウーマンや花屋の店員、介護職、看護師…と、次々に副業でAV女優をされている人に出会ったんです」
-そんな大勢!
「AV女優もツイッターやインスタで発信するようになって、並みの芸能人よりルックスの良い女優も多いですからね。アイドルグループ『恵比寿マスカッツ』の影響も大きかったのか、昔よりずっとハードルは低くなってるんだな、と感じます。実際、AV女優になる人も増えていて年間2000人程度デビューしているそうです。いろんなバイトと同じで“やってみたいことの一つ”という女優さんや、親や職場公認という人もいますよ。政府が働き方改革で『副業・兼業』を進める中、空いた時間を充てる人はもっと増えるんじゃないでしょうか」
【ストレス解消、「女性」としての自分探し、性的満足も】
-でも、職を失う危険はもちろん、さまざまリスクが高すぎるのでは。
「そうですね。ネットの普及で親や職場にバレるリスクは高まっています。本の中でも『出たら人生終わり』『底辺の仕事』と思っていたという人もいます。でも、例えば元々芸能界やモデルにあこがれていたり、パートナーとの性生活に不満を持っていたり、本業でのストレスを溜めている人が非日常を求めるときに、入り口を見つけやすくなった側面もあります。本の中には『AV女優としての顔があることで、気分転換というか、いいリフレッシュになっていた』という方もいますね。土日は“激戦”のため、平日休みの職業で希望される方が増えていると聞きます」
-女優さんたちがすごく堅実なのも驚きでした。
「ええ。そこが『兼業・副業』である強みなのかもしれません。『戻る場所』があるわけですから。一般の職業からすればとんでもない収入を得られますが、ある女優さんは『自分を見失いそうになる恐怖を感じた』と本の中で語っています。商品価値は1~2年ともいわれる厳しい業界で、資格など自分の将来を冷静に見据えて仕事に臨んでいる姿勢が印象的でした」
【業界の「闇」】
-ただ、それでも「搾取されている」との印象もあります。
「この本に出てくる女優さんたちは副業であっても、プロとして体を管理し、磨き、自分を『魅せる』仕事にやりがいを感じています。昔に比べ『自分を安売りしなくなった』と言う人もいます。それは『良い事務所』や『仕事』に巡り合えたからというのもあるでしょう。でも、すべてそうとは限りませんし、非常に低い待遇や強要出演の問題もあります。金銭感覚が麻痺したり、精神的に苦しくなったり後悔する人も少なくないでしょう。だからこそ女優さんたちからは『生半可な気持ちではすすめられない』『悪質な契約やスカウトマンに注意』『自分の意思や条件をきちんと伝えられる人が向く』などのメッセージも寄せられています」
-今後、副業AV女優は増えていくのでしょうか。
「巻末には、AV監督のカンパニー松尾さんのインタビューも掲載していますが、そこで今の状況を生んだ背景についても語られています。『セックスに対して偏見のない新人類』とか。でも『裸仕事に対する偏見がなくなったら困るんです』とも話しておられて、僕も同じ思いです。この『背徳感』こそが、AVの魅力なんじゃないかなと思うので…複雑ですね(笑)」
取材には1年を費やしたといい、「単体」として活躍した有名女優さんも含め10人の思いがつづられています。AVについては、いろいろな考えや思いがあると思います。でも、なぜ女優さんたちが副業としてこの仕事を選んだのか、どう仕事と向き合っているのか、生の声に触れられる機会ではないでしょうか。「『副業』AV女優-ふたつの顔を持つ女神たち」は、四六判208ページ、税込み1404円。彩図社03-5985-8213(神戸新聞・広畑千春)