細分化される平成生まれのハラスメント用語…「ハラハラ」という弊害も 専門家が解説

 4月1日の新元号発表を前に、平成生まれの言葉を振り返ると、元年(1989年)に新語として世に広がった「セクハラ」をはじめ、「パワハラ」など「〇〇ハラスメント」の略称が挙げられる。節目の時期に、細分化されているハラスメント用語を検証した。

 パワハラに代表される職場でのハラスメントでいうと、女性が妊娠や出産のために不利な扱いを受ける「マタハラ」の男性版が「パタニティ(父性)ハラスメント」、略して「パタハラ」。育児休業を取る男性に対する嫌がらせなどをいう。

 性的ハラスメントでは「男(女)のくせに~」などと社会的性差(ジェンダー)の枠を相手にはめる「ジェンハラ」、「彼氏(彼女)いるの?」と個人の恋愛事情を詮索する「ラブハラ」、「結婚しないの?」と未婚者に重圧をかける「マリハラ」などに細分化。さらに人種差別である「レイハラ」、宗教をめぐる「レリハラ」、性的少数者に対する「ソジハラ」などがある。

 「俺の酒が飲めんのか」などアルコールが苦手な人を困らせる「アルハラ」、受動喫煙をしいる「スモハラ」、カラオケでの歌唱を押し付ける「カラハラ」といった酒場でありがちなケースも。ヌードル(麺)をすする音で相手を不快にさせる「ヌーハラ」に至っては、もうキリがないと思うのだが、それを不快に感じる人がいる以上、否定はできない。

 「公益財団法人21世紀職業財団」の客員講師・猪熊康二氏に見解をうかがった。同財団は厚生労働省の委託事業を含めて年間900回程度パワハラに関するセミナー・企業内研修を実施し、同氏はハラスメント防止コンサルタントを務める。

 細分化されるハラスメント用語について、猪熊氏は「今や50種類以上あるといわれています。それだけ、受け手が苦痛と感じる行為や言動に対して敏感になると共に、我慢せずに訴えていこうという動きの現れといえるでしょう」と評した。

 同氏は「ネーミングすることで人々が苦痛と感じる行為・言動が見えやすくなる。何よりも『嫌だ、やめてほしい』ということが訴えやすくなるということでしょう。『○○ハラですよ!』と言った瞬間、言った方は“被害者”側に立てる、もしくは立っているように感じることができる」と説明した。

 一方で「なんでもかんでも『ハラスメント』とネーミングすればいいというものでもないと思います。細分化すると、その“嫌なこと”を特徴づけることはできるかもしれませんが、目的や意味がどこにあるのか、それを見失っては何もなりません」と懸念した。

 猪熊氏は「『ハラスメントハラスメント』という言葉が出てきたように、言葉の混乱が起こっていると感じます。例えば『パワハラ』とはどういうことかも理解せず、その言葉を武器に振りかざすという実態も耳にします。そういう意味で“もろ刃の剣”になるとも言え、今は『ハラスメント』に対する認識の過渡期なのかもしれません」と解説した。

 「〇〇ハラ」と決めつけ、相手を不快にさせる「ハラハラ」。大切なのは、安易にレッテル貼りをしないこと。時代が変わっても、そこは変わらない。(デイリースポーツ・北村泰介)

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