ロイヤルファミリーの複雑な事情 スペインと日本では…現地記者から見た相違点
「令和」の到来で日本では皇室への関心が高まっている。伝統、制度、現在の有り様などが改めて注目されているが、海外のロイヤルファミリーはどうなのだろか。スペインで長年活動を続けるデイリースポーツ・島田徹通信員が、日本とは異なる状況をつづった。
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2014年に日本より先に王位継承が行われたスペイン王室に注目して、いくつかの比較をしてみたい。複数の共通点があるものの、これまでの成り立ちや国民性もあり、実際は両極端なほどの違いがある。
まずは王位継承の背景。日本の場合、今回の譲位は上皇陛下が体力的なことなどを理由に天皇を退位する気持ちを示されたためだが、スペインの前国王、フアン・カルロス1世の譲位は数々の失態で国民の支持が著しく急落したことがきっかけ。ある世論調査では10点満点で3.7点という結果が出るなど、王室存続のため身を引く必要性に迫られてのものだった。なお失態とされる事柄には【1】非公式で訪問したアフリカでゾウの狩猟(※注)を行いその結果負傷【2】愛人問題【3】娘婿(現国王の義理の兄)が公金横領罪で懲役6年の実刑判決を受ける…などがあり、致命的な汚点を抱えていた。
続いて王女について。新国王フェリペ6世のパートナー、レティシア王妃はそれまでCNN、通信社エフェで勤務、さらにスペイン国営テレビ局のテレビシオン・エスパニョーラでニュースキャスターを務めるなどジャーナリストとして活躍していた。この点、皇后雅子さまと同様キャリアウーマンとしての経歴がある。ただし、レティシア王妃は姑と真っ向からの衝突も辞さない強いキャラクターの持ち主だと欧州では度々報じられている。
“事件”が起こったのは昨年4月、マジョルカで王家が揃っての公式行事に出席した直後だった。教会から出てきたフアン・カルロス1世の王妃で現国王の母・ソフィア王妃が、孫にあたるレオノール、ソフィアの両王女を両脇に抱え、記念写真を撮ろうとした。すると3人の前にレティシア王妃が立ち、カメラに背を向け3ショット撮影を阻止する形に。新旧王妃はその場で何度か言葉を交わし、居合わせた前国王、現国王も状況把握に苦慮して混乱する事態となった。
その後、上述の女性4人で市場を訪問する微笑ましいシーンがメディア対象の撮影の場として設けられたが、これは王家の家庭円満ぶりをイメージ付ける演出というのが大方の見方。複数の王室担当記者によると、ソフィア王妃は同じマドリードの宮殿に住んでいるものの息子家族との接点はほとんどなく、孫である両王女の姿は「テレビで見るだけ」だという。
これらの報道は事実が誇張されて伝わっている可能性もある。それでもレティシア王妃が嫁ぎ先で自我を押し出し、軋轢(あつれき)もなんのそので自分の“ルール”を設けている様子はうかがい知れる。皇后雅子さまは皇太子妃のときに、心労などから適応障害との診断を受けて、療養されていた時期があった。正反対な構図と考えられなくもない。
最後に両国の共通点を挙げると、天皇、国王の実子はともに女子だということ。ただ、現国王の長女・レオノール王女はスペイン国王の推定相続人に与えられるアストゥリアス公(女公)となっている。これは憲法の規定通りで、今後男子が誕生した場合に優先順位は変わるが、現状で王位継承順位の3番目までが女性で占められている。
(※注)同国では違法行為ではなかったものの絶滅の恐れがある動物を対象にしたもので、自国の経済状態が著しく悪化している状況での“ハメ外し”に少なからず批判があった。