米国刑務所では1カ月に15人殺される…映画「チカーノになった日本人」KEI氏

 米国の刑務所でチカーノと呼ばれる「最強のギャンググループ」と通じ合うようになった日本人KEI(ケイ)氏(58)を追ったドキュメンタリー映画「HOMIE KEI~チカーノになった日本人~」(監督・サカマキマサ)が10日から大阪・梅田のシネリーブルで公開が始まった(神戸では6月15日から元町映画館で)。米国の刑務所は映画やドラマで常に恐るべき所として描かれる。KEI氏に米国の刑務所について尋ねた。

 KEI氏は元日本の暴力団員。薬物を扱ってハワイで逮捕され、その後米国の刑務所を10カ所以上、約10年間、渡り歩くことになった。

 -アメリカ映画でよく、「ムショには絶対に戻りたくない」というシーンがあります。戻るくらいなら死んだり。よほどひどい所なんだと。

 でも自分はアメリカの刑務所を楽しみました。中も自由ですし、まあ、そんなに苦痛はないです。

 -それはKEIさんが強かった。

 じゃなくて、映画館もありますし野球場もある。仕事もあるし。高校卒業証書があれば給料も上がっていきますし。要領よくやればお金も稼げますし。いいところです。好きな学校行けますし。自分もいろんな授業受けました。友達は刑務所で歯医者の免許とって、いまサンフランシスコで歯医者やってるやつもいます。大学も卒業できますし。

 -日本の刑務所とはまったく違う。

 もう、ぜんぜん違います。

 -KEIさんはどんな学校に。

 アメリカは最低2カ国語をしゃべれなくちゃいけないんです。自分は日本語ともう一ついる。そのために、一番最初に行った学校は英語検定の学校です。それで日常生活レベルの英語はできるという証明書をとりました。その後、サザンカリフォルニア・ユニバーシティという大学に入りました。そこで「パレンティング」という家族の情愛を学ぶような、そういう授業を受けました。それを受けながら「ドラッグ・プログラム」も受けました。500時間です。

 -ドラッグプログラムというのはどのような。

 過去に薬物を経験した人はそれを受ける権利があるんです。受けると18カ月刑が軽くなると言われたんです。それが目的で入ったんですけど、しかしそれはアメリカ人だけが対象でした。そのプログラムを受けて薬のことをいろいろ勉強しました。いま、おかげで薬物のことで相談に来られた人に説明ができます。

 -アメリカ映画では、刑務所で殺されたりするシーンがあります。

 それは事実そういうところです。本人が強くないと厳しいから、自殺する人間も多いし、殺される人間もいる。ひとつの刑務所で月に15人から20人殺されます。日本の刑務所では考えられないところです。そのかわりものすごく自由。人としての権利を持って入っている。各人が信じている宗教も重んじられます。

 -でも殺される。

 それはその人達が悪いからそうなるんです。ギャンブルしたり。すべての薬物が刑務所の中にあるわけですから、中でも薬物中毒になる。最初のうちはカネを払えても、そのうちに外にいる人間もカネをストップすると中でもらえる給料だけじゃ払えなくなる。でも欲しい。コカインや覚せい剤だと、いきなりやめてもそんなに禁断症状は出ないですけどヘロインはないと無理なんです。うそをついて「来週払う」とか言って薬だけもらって払わないと、お金もらえないやつは「なめられている」となるんです。金額じゃないんです。

 -プライド。

 そうです。1ドルでも殺される。約束を守らないと。自分のプライドを守るために殺しちゃう。

 ◆映画概要◆KEI氏は東京・中野生まれ。親の愛情が乏しい家庭に育ちに暴力団員に。ハワイに進出して逮捕。約10年を米国の刑務所で過ごす。日本人はだれもいないという状況の中、だれにもこびずチカーノというギャング・グループと通じ合う。帰国後は警視庁の捜査員から「社会奉仕しろ」と勧められ、ボランティア団体「グッド・ファミリー」を立ち上げ(現在はNPO法人)、問題を抱える子供たちを救済する。母親との確執やチカーノが教えてくれたものを描いた。

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