史上最多勝タイ記録の羽生九段 藤井七段らの台頭が刺激に「改めて将棋が奥深い」
将棋の羽生善治九段(48)が23日、東京・千駄ヶ谷の将棋会館で指された第60期王位戦挑戦者決定リーグ白組5回戦で谷川浩司九段(57)に94手で勝利。公式戦通算1433勝目を挙げ、故大山康晴十五世名人に並ぶ歴代最多タイとなった。
1996年に史上初の七大タイトル独占を、2017年には同じく史上初の永世七冠を達成。さらにタイトル獲得99期、棋戦優勝45回は歴代1位。「自分なりに一年一年、その時その時に工夫することを心がけてきた」という。
だが昨年12月には竜王位を失い、27年ぶりの無冠となった。それでも「失ったのは、自分の実力不足。また新たな気持ちで」と、謙虚に気持ちを切り替えた。また「最近は若くて非常に強い棋士が多い。そうした存在も刺激になっています」と、名前こそ出さなかったものの、自身を超えるハイペースで勝ち星を積み重ねる藤井聡太七段(16)への“ライバル意識”もかいま見せた。
その結果、今年に入って今局を含めて13勝5敗、勝率・722と復調モード。あと1期と迫ったタイトル100期についても「リーグ戦、トーナメント戦を勝ち上がっていくのは大変ですが、チャンスを生かして挑戦できるように」と意欲をのぞかせた。
あらゆる通算記録を塗り替えている羽生九段だが、モチベーションは揺らいでいない。「最近になって、改めて将棋が奥深いと思うことが多くなった」と穏やかに笑った。その裏にあるであろうAIの進化や、それをフル活用した若手棋士の台頭にも、まだまだ屈する気はない。
そんな羽生九段にとって、1433勝もあくまで通過点の一つ。「これからも重要な対局が続く。これはこれでうれしいことではありますが、大きな励みとして次に向かっていく」と前を向いた。
次局は、30日の第32期竜王戦1組出場者決定戦、木村一基九段(45)戦。勝利すれば、単独での歴代最多記録となる。