ドレスコーズ 新作を語る(中)アルバム1枚かけてやってみる価値があるもの

 平成から令和に改元された5月1日、「人類最後の音楽」と銘打ったドレスコーズのコンセプトアルバム「ジャズ」がリリースされた。新時代が幕を開けた日に、人類の終わりについての音楽を鳴らしてみせたドレスコーズ=志磨遼平が企図したものを探るインタビュー、その中編。

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 本作はいわゆるジャズではないが、「ジャズ」と題された。

 「この100年とかの狂騒劇なのか空騒ぎなのか、僕らの歴史というか、存在自体をなんとなく象徴するものとしてのジャズですかね。近代の人類みたいなものとずっと苦楽を共にしてるみたいな、そういう気もしますし、ジャズは」

 志磨は「人類最後の音楽」というコンセプトアルバムを、ロマ音楽を基調とするスタイルで作り上げた。

 「音楽的な興味がジプシー(ロマ)音楽みたいなものに向かったのは単純に最近、好んで聴くようになった(から)。去年、『三文オペラ』の音楽監督をやった影響も大きくて。僕なりに調べて勉強してみたりして。その少し前から興味を持っていたジプシーブラス、管楽器がメインの、東欧辺りのジプシーの人たちの音楽であるとか。ヨーロッパの管弦楽みたいなものに最近すごく興味が向かっているのもあるし、縁もあるような気がして、アルバム一枚かけてやってみる価値がきっとあるものだろうと思って。それだけ決めてたんです、コンセプトより前に」

 カンヌ国際映画祭最高賞を2度、獲得したセルビアの映画監督で、音楽家でもあるエミール・クストリッツァの作品との出会いも大きかった。

 「友だちに勧められてDVD借りたんですよね、『黒猫・白猫』。それがえらく良くて。見られるものは全部見て、面白いな、この人の映画はって。音楽もBGMというよりは、作品の中に実際に楽隊が登場して演奏する。生活に根付いているんだなっちゅうような感じの。音楽もいいんだよなあと思っていて。クストリッツァの率いる、劇中に出てくる楽隊がノー・スモーキング・オーケストラという実在のバンドで。久しぶりの来日公演があるというので、見逃してはいかんと思って行きまして。生で見ると素晴らしいものがあって。ライブを見たのはすごく大きい」

 アルバムでは梅津和時がアレンジで全面的に参加した。バンド「生活向上委員会」などで知られるジャズマンで、RCサクセションとの活動も名高いが、ロマ音楽と極めて近いクレズマー(東欧のユダヤ音楽)のオーソリティーでもある。

 「どういう方に演奏を頼もうってなった時に、梅津さんが一番ふさわしいように思えたので。アルバム1枚を付き合ってくださいというのはカロリーの高いお仕事になりますから、断られるかもしれないなあ、1曲ぐらい吹いてくればとかかなあって思ってたんですけど、『面白そうなのでぜひやります』っておっしゃってくださって。丸ごとつきっきりで一緒に作ってもらいましたね」

 70年代のジャズマンに「ものすごく怖い」イメージがあり、「途中でさじを投げられるかもしれない」と恐れていたが、杞憂だった。「ものすごく優しいし。黙っていてもしょうがないので、僕なりのアイデアをどんどん出すわけですね。それをすごく面白がっていただいて、『出てくるアイデアだいたい面白いからどんどん言ってね』って1日目か2日目くらいにおっしゃっていただいて、だいぶ気が楽になった。完成してからすごいお褒めのメールをいただいて、光栄だなあと」(後編に続く)

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 【ツアー日程】

 ◇6月6日=東京キネマ倶楽部

 ◇6月9日=札幌 cube garden

 ◇6月15日=仙台 SENDAI CLUB JUNK BOX

 ◇6月16日=新潟 GOLDEN PIGS BLACJ

 ◇6月22日=福岡 BEAT STATION

 ◇6月23日=岡山 YEBISU YA PRO

 ◇6月29日=大阪 BIG CAT

 ◇6月30日=名古屋 CLUB QUATTRO

 ◇7月6日=横浜 BAY HALL

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