政府受け取らん!「老後2000万円必要」報告書、異例の撤回
95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要だと試算した金融庁金融審議会の報告書に関し、菅義偉官房長官は11日の記者会見で「政府として正式な報告書としては受け取らない」と述べた。諮問した麻生太郎金融担当相も閣議後記者会見で同様の意向を表明。夏の政治決戦となる参院選への影響を回避する狙いだ。報告書が実質的な撤回に追い込まれる異例の展開となり、金融庁は大幅に修正する検討に入った。
選挙に不都合な指摘を封じ込めようとする安倍政権の姿勢に、報告書をまとめた市場ワーキング・グループ(WG)の委員からは「残念だ」と批判の声も上がった。
金融庁は11日昼までに、麻生氏の受領拒否の意向をWGの委員にメールなどで通知した。金融庁幹部は取材に対し「文言を修正して提出する可能性はあるが、麻生氏が受け取らないかもしれない」と述べた。
菅氏は、金融審の決定手続きも終わっていないとして「あくまで議論の過程段階のものだ」と述べ、参院選に向けて「政府の立場を丁寧に説明し、理解を求めていきたい」との考えを示した。
報告書に対しては与党内から批判が噴出。自民党は11日、金融庁に抗議を伝え撤回を要求した。公明党の山口那津男代表は記者会見で「いきなり誤解を招くものを出してきた。猛省を促したい」と強い不快感を示した。
報告書は今後の金融審の総会を経て、麻生氏に提出される予定だった。麻生氏は「著しい不安とか誤解を与えており、政府のこれまでの政策スタンスとも異なっている」と説明。「公的年金制度が崩壊するようなことは全くありませんから、(政府の政策とは)全然違う」とも述べた。