村上春樹氏、過去唯一の「断筆危機」明かす 「ノルウェイの森」ヒットが原因
小説家の村上春樹氏(70)が26日、東京・半蔵門の「TOKYO FM HALL」で、TOKYO FMの番組「HARUKI MURAKAMI 40th Anniversary 村上JAM~村上RADIO SPECIAL NIGHT~」(8月25日、9月1日、後7・00放送)の公開収録を実施。自身初となる公開収録イベントで、過去に一度“断筆危機”があったことを明かした。
司会を務めた歌手・坂本美雨(39)から「今まで、もう(小説を)書きたくないと思ったことはありますか?」と問われた村上氏は「一度だけあった」と回答。「『ノルウェイの森』がベストセラーになって、いろいろ嫌なことがあって…、ストレスがたまって、書きたくなくなった」と、1987年に出版され世界的ベストセラーになった代表作の名を挙げて説明した。
「嫌なこと」の詳細は語らず、「その時はイタリアに住んでいたんだけど、その1回だけ」とサラリ。今年で小説家としてデビューしてから40周年となるが「僕は割と文章を書くのが好きだから、ずっと書いてますね」と、事もなげに語った。
自身の基本的なスタンスは、「注文受けて小説を書くことはしない。自分が書きたいときに書くというシステム」という。「書きたくないときに書かなきゃいけないというのは経験したことがない」と笑いながら説明した。さらに「書くときは(文章を)音で聞きながら書くんだけど、自分の書いたものを声に出して読むというのは、あまり良くない」と解説。「かと言って、目だけで読んでいくとリズムが取れない。自分の中で、内なる『無音の音』みたいなもので読む。これが結構難しい」と明かした。
文章と音楽は共通点が多いとも力説。「リズムがなきゃいけない。ハーモニーがなきゃいけない。それとインプロビゼーション(即興性)。この3つ」とし、「文章を書くようになってから、楽器を弾くのと同じような喜びを得られるようになった。それはすごく大きい」と話した。
今後の活動については、「今は短編小説をいくつか書きまして、今は(短編を)書く期かなと。しばらく書いてると長編が書きたくなる。繰り返しだから、次何が書きたくなるかは本当にわからないですね」と語った。加えて、「フルマラソンを毎年1回は走るんだけど、それを走っている限りは大丈夫かなと。フィジカルなものと想像力って、わりと繋がってるんです」と持論を展開した。