フジ遠藤新社長、反撃の月9は「恋愛至上主義とは少し違うフェーズに」
視聴率の苦戦から巻き返しへ。6月に就任したフジテレビの遠藤龍之介新社長(63)にインタビューを行い、同局のこれまでや今後、そして新社長の経歴についてを聞いた。全2回の1回目はフジテレビをどう変えていくべきかについて。従業員一人一人の心の持ちようや、局の象徴的な枠である「月9」ドラマの今後についてなどを聞いた。
-今一番、改革しないといけない点は。
「社員を集めた全体会議では、面白いことの一番そばにいてくれという話をしました。ものづくりには、それが一番大事なことだと思います。そんなの当たり前じゃないかと言われそうですが、面白いことのそばにいるというのは意外と大変。絶えることのない好奇心が必要だし、時代の波も考えないといけない。そして、何よりも、その人が面白い人間でないといけない。面白くない人間に面白い企画は寄って来ない、経験則的にそう思うんですよ」
(続けて)「面白いことのそばっていうのは、社員1人1人がその近くにいて、面白いことを吸収してほしいという意味もあるし、社員がパーソナリティとしてチャーミングな人間であってほしいと、そういうことも思います。僕は、成功した企業がかかりやすい病気というのは、保守性と、傲慢さみたいなことだと思うんですよ。傲慢さというのは今申し上げたことで解決できると思うんです。会社の中でも、ものが決まるまでのプロセスが、結構長くなっちゃったりとか、いろんな人の承認が必要になっちゃったりとか。それをシンプルな形で、よりスピードが上がるようにしていくことが大事だと思いますね」
-会議を減らすとか。
「そういうことももちろんありますし…。あと、簡単に言うと、現場の近くにいる人に裁量権を渡すということですね。例えば、番組が決まるまでのプロセス。社内からでも社外からでも企画をいただいて、それを取捨選択するわけですが、その時のスピード感がないと厳しいと思うんですよ。いい時のフジテレビっていうのは企画が3日で決まるとか、1週間で決まるとか、そんな感じでしたから」
-都市伝説かもしれませんが、社屋がお台場に移転して、物理的に繁華街から距離が出たので、町の皮膚感覚をとらえにくくなったんじゃないかと指摘する声もあった。
「僕は、あまりそうは思わないですね。というか、今、町自体にはトレンドがないでしょ。昔は六本木とか、青山とか麻布とかいう町が色濃くて、それぞれにトレンドがあった。今、六本木でも渋谷でも行かれると分かりますけど、みんな同じ表情に見えるんですよ。そこの町特有の色合いというのが、どんどん色あせてきているように感じます。ただ、いろんな個別個別のスポットにはやっぱりトレンドがあると思うんですよ。昔よりも見つけにくくなりましたよね。六本木に行っていればいい、赤坂に行っていればいい、麻布に行っていればいいというものではなくなってきているので」
-長寿番組の終了、切り替えは一段落ですか。
「切り替えていく長寿番組があまりタイムテーブル上、残っていないとは思いますけど…。いい時のフジテレビというのは、我田引水ではなく、時代の波を強くグリップできていたと思うんです。しかし、いつからか、時代のスピードにちょっとついていけなくなってしまった。その結果がいくつかの長寿番組を打ち切らざるをえなくなったということだと思います」
(続けて)「おかげさまで、昨年の後半ぐらいから、徐々にですけど視聴率が回復してきました。先週始まった月9『監察医 朝顔』も好発進です。トライアンドエラーを繰り返しながら、登り始めるところにさしかかっているのかなと感じています」
-「東京ラブストーリー」に象徴されるようなラブストーリーにとらわれなくなった一方、「ラジエーションハウス」には恋愛の要素、群像劇の要素も込められていた。いろんなチャレンジを月9でもしていく、ということですか。
「そういうことになると思います。確かに以前は月9と言えば恋愛ドラマというイメージがあったと思います。もちろん人の人生の中で恋愛は必要なんですけど、生活の中で恋愛の占める割合みたいなものが、昔に比べて少なくなっているような気がします。その結果、月9も恋愛至上主義とは少し違うフェーズに行ったのかなとは思いますね」
◆遠藤龍之介(えんどう・りゅうのすけ) 1956年6月3日、東京都出身。慶大卒業後に81年4月フジテレビジョン入社。01年7月編成制作局制作部長。03年6月広報局広報部長。07年6月から取締役。10年6月に常務取締役、13年6月には専務取締役となる。17年6月からは社長補佐等担当となり、今年6月に社長に就任した。