田辺聖子さんお別れの会 朝ドラで夫役の國村隼「見守ってください」
6月に胆管炎のため死去した作家で、文化勲章受章者の田辺聖子さん(享年91)のお別れの会「ありがとう お聖さん!」が3日、兵庫県伊丹市内のホテルで営まれ、俳優・國村隼、元宝塚歌劇団星組トップスターの瀬戸内美八、同花・月組トップスターの榛名由梨、井戸敏三兵庫県知事、藤原保幸伊丹市長、朝日放送エグゼクティブアナウンサーの道上洋三氏ら関係者150人が参列した。
2006~07年に田辺さんの半生がモデルとなったNHK連続テレビ小説「芋たこなんきん」で、田辺さんの夫の故・川野純夫さんがモデルの役を演じた國村は「いろんな人の人生を生きることを仕事にしていて、大体、1つ終わると(役柄が)抜けてしまう。(でも)『カモカのおっちゃん』(川野さん)は、いつもの仕事だけでは収まりきれませんでした」と当時を回想。
「先生は『カモカのおっちゃん』を評して『チャーミングな大人や』という表現をされた。僕はちゃんとできたのかなと考えたとき、大人になれてなくて『チャーミングな大人』なんてとんでもないと。田辺先生は人生の先達(せんだち)として、いろんなことを教えて下さった。いつの日か、ユーモアがあって、ウイットに富んで、人に優しくできる『チャーミングな大人』になりたい。まだそちらへ行けそうもないので、見守ってください」とあいさつした。
祭壇は本が開いたイメージをカーネーション、スプレーマム(洋菊)などで表現。遺影は08年3月に伊丹市の自宅で撮影された笑顔のショットが使用された。
また、田辺さんの友人で作家の瀬戸内寂聴氏(97)が高齢のため欠席し、弔辞は瀬戸内美八が代読。「聖子さん、あなたが私より先に行かれるなんて、あんまりひどいと思わない?私の方がずっとお姉さんですよ」と無念の思いを明かすと、「どんなに売れても一行も手を抜かなかった作品は、年とともに輝きました」と仕事面を絶賛。
「夫運の良さ」も軽妙に持ち上げた寂聴氏は、「97歳にもなって、めっきり弱りました。お別れの会にさえ出られません。もうつくづくしんどいです。早うそちらに逝って、あなたや(カモカの)おっちゃんに逢いたいです」と本音を吐露。「97歳の死に遅れの寂聴より」と結んだ。
田辺さんは戦後日本を代表する女性作家で、芥川賞受賞作「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」や「ひねくれ一茶」をはじめ、人生や男女関係の機微を軽妙な筆致でつづったユーモア小説などで知られる。