角川春樹氏 生涯最後の監督作「みをつくし料理帖」妻に押され10年ぶりメガホン
実業家で映画監督の角川春樹氏(77)が映画「みをつくし料理帖」(来年秋公開)で監督として生涯最後のメガホンを取ることが5日、分かった。前作「笑う警官」(09年)以降、映画監督業から離れていた角川氏だが、妻に背中を押されて再び映画の世界に戻ることを決意。累計400万部超えのベストセラー小説を原作に、主演女優・松本穂香(22)を迎える。ほかに奈緒(24)と中村獅童(46)も出演する。
女優の薬師丸ひろ子(55)や原田知世(51)らスターを生み出し、映画界に革命をもたらした角川映画のレジェンドが、人生最後のメガホンを取る。
角川氏はこれまでに映画「犬神家の一族」(76年)、「セーラー服と機関銃」(81年)などに製作として参加。映画とともに小説や主題歌のCDを売るメディアミックス戦略で大ヒットに導き、低迷する70年代の日本映画界に新風を巻き起こした。
人生最後と位置づける8本目の監督作は、高田郁氏による累計400万部を超えるベストセラー小説が原作。江戸時代を舞台に、大阪出身の主人公・澪が江戸の味に苦労しながら女料理人として夢を実現していくサクセスストーリーだ。
同作は、12・14年に北川景子、17年に黒木華主演でドラマ化された。原作ファンの角川氏は前作以上の“感動”を伝えようと「ごく普通で親しみが持てる」という松本を主演に抜てきした。
角川氏のラストムービー主演を任された松本は「初めは驚きましたが、いまは澪を演じられる幸せな気持ちでいっぱい。物語の中に流れるあたたかさをみなさんに感じていただけるように頑張ります」と意気込んでいる。
なぜ10年間メガホンを握らなかったのか。その理由を角川氏はデイリースポーツなどの取材に、「子供の行事に行けなくなるから」と答えた。監督を務めると、撮影や編集で休みなき日々が続く。小学生の子供や育児をする妻の負担を第一に考え、監督業から離れていた。
75歳から始めたボクシングの成果もあり、喜寿を迎えた現在も4時間ぶっ通しでミットを打ち続けられる強靱(きょうじん)な肉体と精神を獲得。パワフルな姿を見た妻から「もう一度撮るべき。監督をやってみたら」とアドバイスを受けた。
愛妻に背中を押され、子供に「監督をする姿を見せよう」と最後の作品作りを決めた。ラストと銘打つだけあって気合が入る。東京五輪開催年の公開とあって、すでに世界配給も視野に展開。60以上の国で放送されたNHK連続ドラマ「おしん」のように世界中で愛され「新たな日本のイメージとなる作品」を目指している。
今月中のクランクインを前に、最後のメガホンと聞きつけた角川映画出身の役者からは「出たい」と逆出演オファーが殺到。今後思いも寄らぬスターが出演する可能性もある。角川氏は「目に見える大成功を収めたい。角川春樹の代表作にしたい」と作品に闘志を燃やしていた。