オルケスタ・デ・ラ・ルス(後)35周年を迎え「ここからスタート!張り切っている」
1990年前後に一大サルサブームを巻き起こした、日本が生んだ世界的サルサバンド「オルケスタ・デ・ラ・ルス」が結成35周年の今年、10年ぶりのオリジナルアルバム「Gracias Salseros(グラシアス・サルセーロス)」を7月24日にリリースした。唯一のオリジナルメンバーであるNORA(ボーカル)と、2002年の活動再開から加わったJIN(ボーカル、コーラス)が、アルバム全曲とバンドの現在地をしゃべり倒すインタビュー、その後編。
◇ ◇
1曲目「Gracias Salseros」はアルバムタイトルと同名曲で、サルサ好き(サルセーロス)への感謝(グラシアス)を込めたナンバー。
2曲目「Soy Sopera」は、スープ好きのNORA自身のことだという。
「3年前にコロンビアにソロで行った時に、ホテルのブレークファースト食べる時に必ずスープを頼んで飲んでたら『毎日スープ飲んでるね。君はソペーラだね』って言われて。スープがソパっていうんで『ソパの人みたいな意味なのかな?』って言ったら、『男だったらソペーロ、女だったらソペーラって言うんだよ』。それがすごく残ってて、すぐに移動のバスの中とかでソペーラってコーラス思いついて、持ち帰って作りました」
3曲目「Azucar Mambo」はサードアルバム収録曲「マンボ・デ・ラ・ルス」へのオマージュだ。
「海外のダンサーがああいうテンポの速いインストゥルメンタルの曲はすごく踊りやすいみたいで好きで、その曲みたいなやつを作ろうよって相川(等=トロンボーン、コーラス)君に頼んで、作ってもらってきたのがこれなんですよね。DJがよくかけてくれるのがこういうスタイルなので、ダンスシーンですごい使われるんじゃないかって」
5曲目「La Cosa Buena」は「ザ・グッド・シング」、いいこと、という意味で、この曲もコロンビアでの体験が基になっている。
「『ラ・コサ・ブエナ』ってフレーズをすごくしゃべってる弁護士のおじさんがいて。サルセーロなんですよね。リハを見に来て、『ラ・コサ・ブエナ』ってすごく歌ってるんですよ。自分の作ったやつで。この人面白いな、弁護士なのにって印象に残ってて、そのワードをいただいて作った。アレンジが、今の若い人が好きなキューバのティンバっていうスタイルなんですよね。ティンバ風サルサって感じで。ピアノの斎藤タカヤがそういうの好きなので、ちょっとキューバ風にしてって言っちゃったんで、ゴリゴリのティンバになっちゃった」
6曲目「La Mentira」は「ホントにスタンダードで、ラテンの人だったらみんな知ってる」。「シンプルなボレロにアレンジ」している。
8曲目、メドレーので取り上げた故セリア・クルーズは、サルサの女王だ。
「91年とか92年に一緒に歌わせてもらってるんで、私のサルサの母ですから、トリビュートしたいなって思っていて、よく知られてる大好きな4曲を相川君に頼んでメドレーにしてもらいました。かなり気合が入ったライブバージョンになっています」
9曲目「La Cosa Buena」日本語版は、関西弁の「踊り~や」というフレーズが印象的だ。
「『踊ろう』では普通でつまんないし、リズムもつまんないし、『踊れや』も命令調でいや。考えてたら、鈴木喜鏤(ティンバレス)が『踊り~やにすればいいんじゃない?』って。『スペイン語に聴こえない?ノリが良くなる』って言ったから『それいただき』って言って、そこからガーッと書けました」
JINは「(スペイン語のように)うまいこと一音の中に二つ音が入るって、なかなか日本語では難しいので。それがうまく入った成功例かな」と解説する。
「災い転じて福となす」、「笑う門には福来たる」ということわざも盛り込まれ、NORAは「悪いことをいいことに変えようって曲なので、そういうのをメッセージで入れたかった。そのフレーズがすごくハマってうれしかった」と、会心の笑みを浮かべた。
アルバムに合わせて、1995年以来24年ぶりにミュージックビデオも制作した。「流れがすごくいい」と感じているJINに、NORAも「デビュー当時の感じにもう一回、回ってきたかなみたいな感じがあります。ここから世界行くぞ、みたいな。昔とは全然周りの状況が違うので、起こることは違うでしょうけど、ここからスタート!みたいな気持ちで、みんな新たに張り切っている感じですね」と、手応えを感じているようだった。(終わり)