いよいよ20日最終回「凪のお暇」 サントラ作りの実際をパスカルズ・マツに聞く
女優・黒木華(29)主演のTBS系連続ドラマ「凪のお暇」(金曜、後10・00)が20日、いよいよ最終回を迎える。
空気を読みすぎて倒れたヒロインが仕事も恋人も捨てて人生のリセットをはかる姿や、恋人のモラハラ、毒親といった現代的なテーマが共感を呼び、黒木や高橋一生、中村倫也ら俳優陣の好演もあって評価が高い。その作品世界を支えるのが、どこか懐かしく温かみのある響きで、登場人物のキャラクターや感情の動きなどを巧みに表している音楽だ。
担当するのは14人編成のインストゥルメンタル楽団「パスカルズ」で、4日にはサウンドトラック盤が発売されたばかり。リーダーのロケット・マツに、サントラ制作の実際について話を聞いた。
◇ ◇
パスカルズがドラマのサントラを手がけるのは、女優・前田敦子主演の同局系「毒島ゆり子のせきらら日記」(2016年)に続いて2作目。マツが「毒島」に出演したシンガー・ソングライター、友川カズキのバッキングをしていたことが縁でサントラを担当することになり、さらにその縁で、スタッフが重なる「凪のお暇」を手がけることになった。
サントラがオリジナルアルバムと違うのは「お題が与えられます。『事件1』、『事件2』とか、『悲しみ』とか、『恐怖』とか。そういうイメージが音楽コーディネーターから与えられます」というところ。「イメージが与えられるのは、逆に作りやすいというのもあるかもしれません」という利点があるという。ちなみに、必ずしも「お題」通りのシーンでその曲が流れるわけではない。
音楽を作り始めた時点ではまだクランクインしていなかったため、原作漫画と仮の脚本を参照して進行。曲数が多いため(サントラ盤は全33曲)、本作ではマツ(トイピアノ)、金井太郎(ギター)、坂本弘道(電チェロ、ノコギリ)で分担し、他のメンバー2人にも1曲ずつ振って作曲した。
専門の作曲家とスタジオミュージシャンによる通常のサントラであれば、2日間でレコーディングし、1日でトラックダウンするというが、14人編成のパスカルズだけに「全員が一堂に会した曲は1曲もない」にもかかわらず「人数が多いのですごく大変でした。2週間以上録音していたと思います。トラックダウンも4日間かかったので。とにかく全力でやりました」と振り返る。
また、締め切りが決まっているため、オリジナルアルバムに比べて迅速に録音せざるを得なかったが、それが「逆に良かった」と、いい方に作用したよう。仕上がりには「僕以外のメンバーもそうだと思いますが、すごく満足しているんじゃないか。エンジニアも生音をすごくナチュラルに仕上げてくれる達人なので、テレビ番組としては個性を出せたのではないか」と、手応えをにじませた。
パスカルズには「結局、いつも自分たちが作っている曲も、ある意味サントラ的な意味合いがある。インストだし、架空のサウンドトラック的なものではあります。そんなに違和感なく作っています」と、サントラとの親和性もあると考えており、「ドラマで聴こえてくる感じとサントラは違っていて、曲としての完成形にまでたどり着いているので、そこを楽しんでいただければ」とアピール。
初めてゴールデン・プライム帯の番組の音楽を手がけたことからは「まさかやるとは思わなかった。最初は若いOLさんのお話だし、踏み出していいかなと思いました」と戸惑いもあったが、「やって良かった」と大きな収穫を得たようだ。
パスカルズの年内のライブ予定は次の通り。「凪のお暇」からも「4曲くらいは演奏します」という。
◇9月29日(日)大阪・服部緑地野外音楽堂「服部緑地RAINBOWHILL2019」(雨天決行)
◇9月30日(月)京都・磔磔
◇10月1日(火)名古屋・得三
◇10月23日(水)横浜・THUMBS UP
◇10月24日(木)下北沢・GARDEN
【パスカルズ】1995年、故高田渡さんや故忌野清志郎さんとも演奏してきたマツを中心に結成。通常の楽器以外におもちゃやノコギリなども使う「自由度とシンプルなメロディーが合体」(マツ)した国籍不詳、唯一無二のサウンドに、元「たま」の石川浩司のキテレツなパフォーマンスや火花を上げる坂本弘道のチェロなどのシアトリカルなステージも相まってカルト的な人気を獲得しており、たびたびツアーを行う欧州での評価も高い。元「たま」では知久寿焼も在籍。劇伴は山下敦弘監督の映画「松ヶ根乱射事件」、出演もした大林宣彦監督の映画「この空の花-長岡花火物語」、「野のなななのか」、ケラリーノ・サンドロヴィッチの舞台など。