新作で「原点に立ち返った」古武道 恒例の忘年会&新年会を開催
古川展生(チェロ)、妹尾武(ピアノ)、藤原道山(尺八)によるインストゥルメンタルユニット「KOBUDO-古武道-」が、10月30日に8枚目のオリジナルアルバム「HORIZON」をリリースした。12月24日に大阪・新歌舞伎座で「古武道忘年会『師走の協奏曲』Vol.11~なにわ友あれクリスマス~」、来年1月19日に東京・世田谷パブリックシアターで「古武道新年会Vol.6~初春の狂詩曲~」と恒例のコンサートを開催する古武道から、「古」こと古川が新作と両会への思いを語った。
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クラシックの古川、ポップスの妹尾、純邦楽の藤原という出自を異にする、そしてそれぞれのジャンルのトップランナーでもある3人が組んだ古武道は、2017年に結成10周年を迎えた。大きな節目を越えた3人が今秋、発表した「HORIZON」は「原点に立ち返って、オリジナルで勝負したい。自分たちのあり方を自分たちで問うアルバムを作ったつもり」だという。
古武道のメインソングライターは、ゴスペラーズの代表曲「永遠に」など、作曲家としても活躍する妹尾だが、今作の1曲目「Horizon」は古川が作曲した。「ピアノをやっている8歳の息子がいるんですが、歌うのが大好きで色んなメロディーを口ずさんでいる。そんなメロディーで一つ、いいなと思って、それを自分なりにかみ砕いて消化しました」という、いわば親子“合作”だ。
アルバムタイトルも同じ「HORIZON」で、偶然、妹尾がこのアルバムタイトルを考えており、「Horizon」がアルバムのオープニングを飾った。古川は「古武道サウンドはメロディー、和音、ハーモニーで勝負する曲が多いのですが、その配置がうまくいっている」と自負。アルバム全体の仕上がりにも「オリジナルが多い(15曲中12曲)のですが、ファンの方からは待ってました!という声をいただいていますし、初めて聴いてくださった方にも自然な形で受け入れていただけた印象を持っています」と、自信をにじませた。
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「忘年会」は初のクリスマスイブ開催となり、「クリスマスにちなんだ曲、クリスマスソングもたくさんやります」と公約。人気ミュージカル俳優の岡幸二郎、ストリングスの松本尚子クインテットが参加し「ストリングスを入れていただいたので、いつもやってるナンバーもまた違う聴こえ方、立体的な響きになるし、岡さんにはぜひクリスマスソングをお願いしたい」と、スペシャル感のある構成を計画している。
「新年会」には篠笛の佐藤和哉と尺八アンサンブルの風雅竹韻が参加。「オリンピックイヤーということもあって、和のテイストを全面的に打ち出そうと、あえて邦楽の方を中心にお呼びしました。日本の音楽の良さを改めて伝えていきたい」と、「忘年会」とはがらりと違った内容を届けるつもりでいる。
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出自は違う3人だが「信頼とつながりは深くなっている」ときっぱり。3人とも音大卒で「ベーシックにクラシックの教育を受けている」という共通言語がある一方で、ジャンルが異なることで、例えば古川であれば、クラシックではまずないアドリブ演奏や邦楽の譜面など「普段見ているものと違うものを見る」経験が「刺激になり、勉強になる」と説明する。
そんな古武道のマジックが、「忘年会」と「新年会」では存分に堪能できそうだ。
【KOBUDO-古武道】純邦楽の藤原道山(ふじわら・どうざん=尺八)、クラシックの古川展生(ふるかわ・のぶお=チェロ)、ポップスの妹尾武(せのお・たけし=ピアノ)が2007年結成。藤原は東京芸術大、古川と妹尾は桐朋学園大卒。日本の伝統と感性を大切にしつつ、さまざまな音楽を取り入れた繊細かつ壮大なサウンドが特徴で、ライブはもとより、テレビ、CM、舞台音楽なども手がける。今回、インタビューに答えた古川は、東京都交響楽団の首席チェロ奏者で、セイジ・オザワ松本フェスティバル(旧サイトウ・キネン・オーケストラ)には毎年参加。米アカデミー外国語映画賞受賞作「おくりびと」のテーマ曲のソロ演奏も担当した。