原田大二郎 坂口安吾に挑む 朗読ライブで名作「桜の森の満開の下」上演
今年デビュー50周年を迎える俳優の原田大二郎(75)と、世界的な打楽器奏者の佐藤正治(61)が、4月にライブツアー「朗読とパーカッションの世界 『桜の森の満開の下』」で、文豪・坂口安吾(1906~55)の名作に挑戦することになった。50代の終わりから朗読に取り組んできた原田は「伝説を作りたい、朗読の世界でもね。原田大二郎の朗読は普通の朗読じゃないんですよ!」と意気込んでいる。
ドラマ「Gメン’75」やバラエティー「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」などで人気を博した原田と、前衛ロックバンド「ヒカシュー」のドラマーで作曲家、プロデューサーとしても活躍する佐藤-大ベテラン2人が合体したのは、昨秋のことだった。
文豪・森鴎外の「高瀬舟」を京都で上演する企画に原田が朗読、佐藤がパーカッションで招かれ、「同じ世界を目指しているんじゃないかという幻想(を抱けた)」(原田)と意気投合。全くの初対面ながら、原田の朗読と佐藤の即興演奏は「音の出だしのタイミングとか、音の高低に関する神経とか、同じ世界の人だなと」(原田)と、息がぴったり合ったという。
原田が「50、60過ぎてからの友達は珍しい」と言うほど親しくなった2人。京都の舞台の裏に桜並木があったこと、原田が50周年企画を考えていたことから「桜の森の満開の下」へと発展した。
原田は「芝居はとにかく没頭することが基本。役の中に没頭して、その時間に没頭するのが僕の流儀」といい、自身の朗読を「登場人物にうんとなりきる、なりきり派の朗読」だと定義。「その作品の中に没頭していけば、その作品に触れたという感動が得られるんじゃないか」と話す。
佐藤はいわゆる打楽器の他にもギターなどの楽器、「普通の生活をしていると合わないような物」、自身の声や身体まで、何でもパーカションとして活用。「原田さんの呼吸、客席の呼吸も反映させてインスピレーションが湧き、その場で作曲して音を取っていく」と説明する。
佐藤は、「高瀬舟」では「(原田は)常に心が開いていて、音や言葉のエネルギーが未来に向いている。躍動感が振動になって伝わってきた。原田さんが朗読をしている後ろに何層もの世界があって、僕がインプロバイズ(即興演奏)するフレームの外側にある世界まで表現できた」と、手応えを振り返る。原田とのコンビは、朗読とその伴奏より「何歩も踏み出している。新しく、気持ちいい世界だと思ってもらえる」と自信を見せた。
日本は現在、新型コロナウイルス感染拡大のさなか。初日の4月5日に76歳の誕生日を迎える原田は、本番までの終息を願いつつも「それ(コロナ)に負けたくないけど、中止の憂き目に遭うかもしれないのは覚悟の上」と達観している。
佐藤は「これ(コロナ)によって生まれる表現行為もあるかもしれない。あらゆることから目を背けないで正直に生きていきたい」と、コロナの“先”を見据えていた。