「デジモン」を今の人に「喜んでもらえるものに」20年経たリブートへの思い
初代のテレビアニメ「デジモンアドベンチャー」が終了してから20年。2020年4月5日から、そのリブート作品と位置づけられた「デジモンアドベンチャー:」がフジテレビ系でスタートする(日曜、午前9時)。劇場版では初代から続くシリーズの完結編にあたる「LAST EVOLUTION絆」が公開されたタイミングで、どうして、また「デジモン」なのか。初代作品にも携わった東映アニメーションの櫻田博之プロデューサー(以下、桜田P)と、20年前は視聴者の側だったフジテレビの江花松樹プロデューサー(江花P)に話を聞いた。
「デジモンアドベンチャー」はある日、異世界=デジタルワールドに飛ばされてしまった八神太一ら少年達と、そこで暮らす「アグモン」らデジタルモンスター達が繰り広げる冒険劇。ゲームから生まれたシリーズで、骨格は王道ながらも、当時普及し始めていた、インターネットに代表される“デジタル”な世界観を織り込み人気を獲得した。以後、多くのテレビシリーズや劇場版などが生み出されている。
なぜ初代作品が放送を終了してから20年がたった今、初代の「デジモン」をリブートするのか。“そもそもな質問”に櫻田Pが説明してくれた。
櫻田P「1999年から2000年ごろっていうのがちょうどインターネットが普及し始めたころ。『たまごっち』から『デジモン』という携帯玩具というんですかね…そういうのが出始めたころですよね。携帯電話もまだそこまで普及していないころだったので。時代の最先端的なところもあったと思うんですよね」
当時、斬新だった世界観に加えて、主題歌「Butter-Fly」は近年のアニメソングの中でも屈指の人気を誇る。そんな名作に、再び目を向けてもらいたいという思いをにじませながら、櫻田Pは「新しい子ども達に『デジモンアドベンチャー』を新しく知ってもらいたいというのが、デジモンをやっていた人たちに、過去の物にしてしまいたくないなということもあって」と説明してくれた。
メイン視聴者層の少年だった江花Pは、「デジタルとかインターネットとかをモチーフにした映画とかマンガも死ぬほど出てきている中で。でも、20年前でいったら『デジモン』ってその先駆けぐらいなアニメだったと思う」と当時を懐かしむ。当然、20年前に登場した道具や世界観も今見ると、時代の流れを感じさせることもある。「99年版と変えないところは変えずに、でも時代性とかは配慮して」(江花P)と、スタッフ一同で話し合いながら新作を生み出しているのだという。
その一例に、現実世界を舞台にしたストーリーが増える、ということがある。
櫻田P「今の東京とか、現実の世界の危機を描いて、そういうのがデジタルの中で起きている、デジタルモンスターによって起こされているんだよということで、その危機を救うというのも両面。『ぼくらのウォーゲーム!』(編集注・2000年公開の劇場作品「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」細田守監督)っていうのもありましたけど、昔。現実世界のクライシスを乗り越えるためにもデジタルワールドで冒険するという。舞台を現実世界とデジタルワールドの両面を描いていきたいなと。それによって2020年の今という雰囲気を出したいですし、表現を新たにする方法としては、その両面を描くというか。今の東京とか、今の日本とか」
初代作品からシナリオを一新して、世界観やキャラクターの魅力はブラッシュアップして、新たなスタートを切る。櫻田Pは、かつてのファンと同時に、新たなファンも意識して、「新たな20年かその先は分からないですけど、続けていきたいなという思いで、初心にかえってということもありますし。デジモンアドベンチャーってすごく人気があったりとか、皆さんの印象に、記憶に残っている作品でもあるんですね、当時の人たちに。でも今の人たちにとって、記憶に残ったり、喜んでもらえるものにしたいなということで、始めます」と力強く語った。