志村さん常連店 空席寂しい…幸運呼んだ街・麻布十番 オーナーシェフ「つらい」
新型コロナウイルスによる肺炎のため、タレントの志村けんさんが29日に70歳で亡くなった。志村さんにとって、ご当地音頭でブレークに導いてくれた故郷の東京・東村山市とともに、慣れ親しんだ街だった麻布十番にも31日、静かに悲しみが広がっている。
志村さんにとって、東村山以外にも、思い入れの強い町がある。都内有数の繁華街・六本木から地下鉄で1駅の麻布十番だ。若かりし頃、町内の賢崇寺で除夜の鐘を突いたのをきっかけに、「仕事運が上がった」と喜んでいたといい、以降、大みそかは麻布十番での“幸運の鐘突き”が恒例だった。
お酒をこよなく愛した志村さん。麻布十番でグラスを傾ける日が多く、行きつけの店が点在する。今年の誕生日直後の2月25日、親族に古希祝いをしてもらったのも、麻布十番のなじみのすし屋でだった。訃報を受け、店外に志村さんのポスターと追悼メッセージを掲げたバーもあった。
老舗イタリア料理店「クチーナ ヒラタ」には、30年前から通っていた。最近でも毎月1~2度のペースで通う常連で、テレビで紹介したこともある。オーナーシェフの町田武十さんによると、窓際のテーブル席に座って、静かに夕食とお酒を楽しむのが志村さんのスタイル。自ら予約を入れて、プライベートでの知人と訪れることがほとんどで、他の来店客に声をかけられると、気さくに写真撮影にも応じていたという。
最後に来店したのは1カ月ほど前。普段通りで咳(せ)きこむ様子もなかったといい、毎回必ず注文する大好物「ウニのリゾット」や温菜などを、赤ワインと共に平らげた。町田さんは突然の別れに、「受け止めるのが、つらいです。けんさんにもう召し上がっていただけないと思うと、昨日は調理中に涙をこらえるのに必死で…」と落胆していた。