歌姫あゆの物語 90年代の“象徴”六本木「ヴェルファーレ」大階段再現

 テレビ朝日系ドラマ「M 愛すべき人がいて」(土曜、後11・15)が18日にスタートする。歌姫・浜崎あゆみ(41)が誕生するまでを描いた小説が原作の話題作で、主演は女優・安斉かれん(20)と三浦翔平(31)。舞台となる90年代の流行やカルチャー、音楽の描写にも力を入れている。どうすれば、あの時代の熱気を伝えられるのか。服部宣之プロデューサーは、ある“象徴”に思いを込めた。

 原作は魅力も話題性も十分。映像化にあたっては、エンターテインメント的な楽しさを付加することを追求した。華やかなあの時代をよみがえらせる-。象徴として作ったのが、あるこだわりのセットだ。モチーフは当時、連日大盛況だった東京・六本木のクラブディスコ「ヴェルファーレ」にあった大階段。すでに閉店したため、再現するには新たに作るしかなかった。

 スケールも半端ではない。ビル3階分の高さに迫る代物。服部氏は「何十年やってきて、階段だけでスタジオが埋まったのは初めて。(費用も)結構いい外車が買えると思います」と苦笑した。

 それでも「それだけは絶対に撮りたいなと。譲れなかった」という。こだわりの裏には、階段に求めた意味がある。「音楽業界もエンタメ業界も階段みたいなもの。誰かが上って行き、誰かが舞台から下りてくる。夢へのアプローチでもあるし、すれ違いの場所でもある。象徴みたいだなと」。劇中でも、主人公は少女から歌姫へ、成長の階段をのぼっていく。彼女を育て上げる敏腕プロデューサーと、最初に出会う場所にもなっている。

 出演者やスタッフへのメッセージも込めた。「エンターテインメントは効率だけじゃ伝わらない。“無駄なもの”をいっぱい作るっていうのがあの時代。熱気や狂乱を表すために、何か1個作った方がいい。気概を示すというか、覚悟でもあるんです」と明かした。

 服部氏がADとしてテレビの世界に飛び込んだのは20歳だった97年。当時は“階段”の下から見上げる立場だった。「あの時代を通ってきた人にとっては、自分のどこかの恋を思い出す物語。知らない人には、こんな元気でギラギラした時代があったの?っていうことを楽しんでもらえたら」。時代の象徴として心に刻まれる大階段。そんな背景も、ドラマのスパイスになる。

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