【中田宏の先憂後楽】緊急事態宣言の延長…出口戦略を明確化した吉村知事の本気度
新型コロナウイルスの影響で、社会状況が刻一刻と変化する日々が続いています。今さら聞けないコロナ時代の疑問を、衆議院議員と横浜市長を務めた中田宏氏(55)が解説する「中田宏の先憂後楽」。第4回は「緊急事態宣言の延長」がテーマです。
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緊急事態宣言の延長が決定した。政府から「解除目安」が示されない中、大阪の吉村洋文府知事は解除に向けた3つの指標を発表し、独自の基準「大阪モデル」にもとづいた段階的緩和を提示した。
「ただ延長だけ発表し、トンネルの先に光がまったく見えないという政府の示し方を強烈に批判した形。知事の方が自分のエリアにおいて病院や住民の不安、悲鳴が次々と入り、体温が感じられる。3つの指標を示したことで、一歩進んだ感じが希望になるんですよね。『トンネルを延ばしました』が総理の会見で、トンネルの先に明かりを示したのが吉村知事。政府より早く数字を出したことで、かなり政府を出し抜いた印象です」
吉村知事は、経済が限定的となっていることによる倒産危機や失業問題を踏まえ「経済対命」ではなく「命対命」の問題であると主張している。
「日本ではリーマンショックのあとに毎年3万人の自殺者が出ている。経済が悪化することで、コロナによる直接的な死だけでなく、コロナ関連死が増えてしまう。早くから経済学者はそのことを言っていたわけだけど、吉村知事が出口戦略を明確化したことで、政府は後手に見える」
吉村知事や東京の小池百合子都知事ら存在感を発揮する都道府県の長がいる一方、話題にのぼらない知事もいる。
「一番に思うのはやはり本気度。この期に及んで役人が作った原稿を読んでいるだけ、みたいな人もいるわけです。それに対して、自分で伝えるべきメッセージを伝えている人は伝わっている。ようは質。『パフォーマンス』ってよく言うけど、それは一過性のものを指してるんだよね。中身があれば次につながっていくんだよ」
◆中田宏(なかだ・ひろし)1964年9月20日生まれ、神奈川県横浜市出身。青山学院大を卒業後、松下政経塾に入塾。92年、日本新党の結党に参加。細川護煕氏や小池百合子氏の秘書を担当。93年、衆院議員に初当選。通算4期務めた。02年から2期連続で横浜市長。財政改革を断行。「日本の構造研究所」代表。連載タイトル「先憂後楽」は「リーダー論です。次の世代が楽になるように先代はやっておけ、ということです」。