藤井聡太七段、最年少タイトル挑戦 永瀬二冠破り、31年ぶり記録更新
将棋の藤井聡太七段(17)が4日、東京・将棋会館で行われた第91期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦で、永瀬拓矢二冠(27=叡王・王座)に勝利。17歳10カ月20日の史上最年少でのタイトル戦挑戦を決めた。藤井七段は8日開幕の五番勝負で渡辺明三冠(36=棋聖・棋王・王将)に挑戦する。1989年12月に、屋敷伸之九段(48=当時四段)が第54期棋聖戦で達成した17歳10カ月24日を31年ぶりに更新した。五番勝負で勝利すれば、同じく屋敷九段の記録を約6カ月更新する最年少記録となる。
数々の新記録を打ち立ててきた藤井七段が、また将棋界に新たな歴史を作った。
新型コロナウイルスの影響を受け、リモートで行われたインタビューでは「挑戦は意識せずに、盤上に集中しようと思って臨んだ。挑戦するという実感は、あまり沸かないです」と笑顔。デビューから3年半での挑戦という驚異のスピードにも満足はしていないのか、「プロになってからもうそんなにたつのか、という気もするんですけど…」と語った。
一度は諦めかけた夢だった。緊急事態宣言の影響で100キロを超える遠距離移動の対局はすべて延期に。愛知県在住の藤井七段は対局を行えず、4月中旬に予定された棋聖戦準決勝も延期された。だが、6月1日に遠距離移動の対局が再開。2日に準決勝、4日に挑戦者決定戦、8日に五番勝負開幕という異例の日程が実現した。
再び訪れたチャンスにも「特に(最年少は)意識しなかった」と平常心をキープ。プロになってから初めての、2カ月間ものブランクも「自分の将棋としっかり向き合うことができたのかな」と前向きにとらえていた。
永瀬二冠とは公式戦では初対局だったが、2017年に行われた非公式戦「炎の七番勝負」で対戦。羽生善治九段(49)ら6人を撃破した藤井七段が、唯一敗れた相手だった。永瀬二冠の先手で、戦型は相掛かりに。中盤は劣勢とみられたが、粘り強い差し回しで逆転。終盤は永瀬二冠に誤算があったのか、一気に大差となり、最後は永瀬玉を即詰みに討ち取った。
五番勝負で待ち受ける渡辺三冠は、現役最強の呼び声も高く、通算タイトルは歴代5位の25期。公式戦での対戦は19年2月の朝日杯将棋オープン戦決勝のみで、その際は藤井七段が快勝した。渡辺三冠の印象を「最近特に充実されているなと感じています」とし、「最高の舞台で、自分も成長したい」と謙虚に語った藤井七段。それでもその目は、史上最年少のタイトル「獲得」という快挙も、しっかり見据えていた。