藤井七段 史上最年少タイトル初挑戦で先勝 着物じゃなくスーツで…渡辺三冠に勝利
将棋の藤井聡太七段(17)が、渡辺明三冠(36=棋聖、棋王、王将)に157手で勝利。屋敷伸之九段(48)の記録を4日更新した史上最年少で臨んだ初のタイトル戦を、幸先良く白星でスタートした。タイトル戦の“定石”である和服姿ではなくスーツ姿で対局に臨んだ藤井七段は、現役最強とも称される渡辺三冠とがっぷり四つの勝負を展開。最後は自慢の終盤力をいかんなく発揮した。第2局は28日に同所で行われる。
この世に生を受け、わずか17年10カ月と20日。驚異のスピードで上昇を続ける若武者が、初の大舞台でまた新たな歴史を作った。
対戦相手は歴代5位のタイトル通算25期を誇り、竜王、棋王と2つの永世位も保持する渡辺三冠。昨年度は最優秀棋士賞に輝いた現役最強棋士にも、ひるまず力まず、冷静に立ち向かった。
振り駒で先手番となると、“ルーティン”通りにお茶をひと口含み、7六歩と着手。注目の戦型は、最も得意とする角換わりではなく、渡辺三冠の得意とする矢倉を選んだ。優劣不明のまま突入した終盤、渡辺三冠のわずかな緩手をついて一気に勝勢を築いた。
最後は渡辺三冠が執念の連続王手で迫ってきたが、落ち着いて対応。秒読みの中、一手で形勢が逆転する緊迫の場面も、ミスを犯すことなく勝ち切り「かなり際どい展開になって、時間もなかったので、分からないまま指していたという感じでした」と安どの表情で振り返った。
タイトル戦の対局者は和服を着用することが多いが、藤井七段は普段通りのスーツ姿だった。挑戦決定からわずか4日だっただけに、師匠の杉本昌隆八段(51)とも相談して決定。「和服は第2局以降に着られれば」と話した。
対局場も慣れ親しんだ将棋会館の特別対局室とあり、入室時も緊張した様子はなし。タイトル戦の舞台に「素晴らしい環境を用意していただいて、その中で対局できるのは非常にありがたい」と感謝しつつ、「盤面には集中できた」と大物ぶりを見せつけた。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、プロになってから初めて2カ月間ものブランクを体験した。さらに今月2日に準決勝、4日に挑戦者決定戦、8日に5番勝負開幕というハードスケジュール。常識的には厳しいハードルも、鮮やかにクリアしてみせた。
「1つ勝つことができてほっとした。まだ先は長いので、第2局以降もしっかり指せれば」と謙虚に締めくくった藤井七段。タイトル「獲得」の最年少記録は、屋敷九段が1990年の棋聖戦で達成した18歳6カ月で、今回の五番勝負を制すれば更新する。さらなる金字塔まで、あと2勝。一気に頂点まで駆け上がる可能性を、大いに感じさせる勝利だった。