本広、押井、小中、上田の4監督 実験レーベル立ち上げ日本映画界に新風
日本映画の第一線で活躍する本広克行監督(55)、押井守監督(69)、小中和哉監督(57)、上田慎一郎監督(36)が参加する映画実験レーベル「Cinema Lab(シネマラボ)」が発足し、第1弾作品として本広監督の「ビューティフルドリーマー」が11月6日に公開されることが11日、分かった。1960~80年代の日本映画をけん引したATG(日本アート・シアター・ギルド)に着想を得た監督絶対主義レーベルが、ウィズコロナ時代の日本映画界に新風を吹かせる。
新型コロナウイルスの影響下、大きな変革期を迎えている日本映画界で、業界をけん引してきた作家たち-「踊る大捜査線」シリーズの本広監督、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」などのアニメ映画で世界的に名高い押井監督、ウルトラシリーズで知られる小中監督、「カメラを止めるな!」で異例の拡大ヒットを飛ばした上田監督が決起した。
シネマラボはATGに着想を得た、監督の作家性を最大限に生かす“監督絶対主義”で映画を制作する実験レーベル。日本映画界に違う角度から光を照らし、映画を好きになってもらうこと、映画の魅力の再発見、次世代映画監督の発掘など、日本映画界に貢献することを目指す。
映画化の条件は「限られた低予算」のみで、企画開発、脚本、キャスティング、ロケーション、演出など全てのクリエーティブは監督が自由に手がける。
小中監督は「変化している時代に多様なジャンルの映画作品を届けるため、監督一個人ではなく、志のある映画監督が集まり、共同戦線を組み、ムーブメントを作り上げる必要を感じていました」、「そんなことを考えて本広さんや押井さんの賛同を得てシネマラボ企画は動き出しました」と、設立に至った経緯を説明。「『監督が自由に映画を注ぐ魂』と『商業映画』の幸福な融合ができれば」と抱負を述べる。
第1弾作品を手がけた本広監督は「次世代のクリエイターたちが撮りたいものを撮れる場を作れないか、というのをずっと思っていました。その土台に、私たちがなれればいい」と決意表明した。
◆ATG
61年設立で多くのアート系作品を製作・配給。68年の大島渚監督「絞死刑」から、映画作家側と折半した1000万円という低予算ながら、作家性を自由に発揮させた作品群で日本映画界をリードした。小中監督は「『限られた予算』という条件と引き替えに自由を得た監督たちが勝負を挑む場」と、その意義を説明する。
主な作品に岡本喜八監督「肉弾」(68年)、篠田正浩監督「心中天網島」(69年)、寺山修司監督「田園に死す」(74年)、黒木和雄監督「竜馬暗殺」(同)、長谷川和彦監督「青春の殺人者」(76年)、大林宣彦監督「転校生」(82年)、森田芳光監督「家族ゲーム」(83年)、伊丹十三監督「お葬式」(84年)などがある。