30歳柳楽優弥「ポケモンっぽいんです」ヤギモンのレベルアップする姿を楽しみに

 映画「誰も知らない」での衝撃デビューから16年。俳優の柳楽優弥が30歳を迎えた。10代での栄光と転落、20代で築き上げた演技派としての地位。王道からコメディーまで幅広い役柄で魅了してきた柳楽は、どんな30代を見据えているのか-。節目の年齢を記念したアニバーサリーブック「やぎら本」(9月20日発売)で総決算した、俳優人生の“現在地”に迫った。

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 初めてのオーディションで映画「誰も知らない」の主演に抜てきされ、14歳のときにカンヌ国際映画祭で史上最年少の最優秀主演男優賞に選ばれた。これ以上ない俳優人生の走り出しに見えるが、30歳記念本の表紙には15歳の柳楽が30歳の自分に向けてつづった手紙が掲載されている。「30歳の時、どん底に落ちてるのだろうか?それとも、もうどん底からはい上がっているのだろうか?」。

 文面には、苦渋がにじむ。3作目の主演映画「シュガー&スパイス」の撮影中に書いたものだという。柳楽は「どうやったら演技がうまくなるんだろうと考えていた時期で、それを乗り越えていてほしいという願いを込めて書いたんだと思います。30代が分岐点だと感じていたのかもしれないですね」と振り返った。

 デビューからスポットライトの真ん中に置かれ、早熟の天才は苦悩する。18歳で体調を崩し、一時休養。21歳になってアルバイトをしていた時期もあった。「バイトしていたときも日記を書いていて、情熱にみなぎっているんですよね。『とにかく俺は勝つ』みたいな。毎日、日記を書いているわけではないんですけど、節目に残しているみたいです」と明かした。

 その後の復活は誰もが知るところだが、栄光と挫折を味わったからこそ、30代でのさらなる飛躍にかける思いは強い。19年には米ニューヨークに3カ月間、語学留学。朝から学校に通い、下校後もレストランで手伝いをさせてもらうなど、ネイティブの英語を、その身に染みこませた。

 国際派の俳優に進化していく過程を「いくつか海外の映画祭に参加させていただく機会があったんですけど『イエスしか言ってないな、俺…』と思って、これはまずいぞ、と」としみじみ。「ビギナーズラックじゃなくて、演技を重ねていく中でのセカンドラックでもう一度、カンヌに行きたいという夢もあります」と、新たな思いも口にした。

 「誰も知らない」の是枝裕和監督(58)のことは「親戚のおじさん」と表現して、笑う。自身の撮影現場に呼ぶこともあり「縁起よさそうじゃないですか?」と不思議な関係が続いている。記念本では対談も行った。

 「是枝さんには『33歳でオファーしてください』と言いました。自分、ポケモンっぽいんです。レベルアップしていく姿があからさまにわかるタイプの俳優というか。“ヤギモン”を楽しみにしていてください」。10代をリセットして、はい上がった20代。20代から準備を進め、たどり着いた30代。進化するヤギモンから目が離せない。

 ◆柳楽優弥(やぎら・ゆうや)1990年3月26日生まれ。東京都出身。初オーディションだった映画「誰も知らない」(04年公開)でカンヌ国際映画祭を始めとした映画賞を席巻。2010年には車のディーラーや飲食店でのアルバイトを経験した。主な出演作はドラマ「アオイホノオ」「ゆとりですがなにか」「まれ」「おんな城主 直虎」や映画「ディストラクション・ベイビーズ」など。来年には映画「HOKUSAI」や日本テレビ系ドラマ「二月の勝者」が待機している。

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