是枝裕和監督ら映画人有志22人 日本学術会議への人事介入に抗議声明
是枝裕和監督、白石和彌監督、塚本晋也監督、俳優の古舘寛治ら映画人有志22人が5日、「日本学術会議への人事介入に対する抗議声明」を出した。
声明では、日本学術会議が推薦した新会員候補6人の任命を菅義偉首相が拒否したことに関して、「第2次世界大戦に科学が協力したことを反省し、1949年に設立されたもので、内閣総理大臣が所管し、経費は国費負担としつつも、独立して職務を行う『特別な機関』と位置付けられました」と、日本学術会議の役割を説明した。
除外された6人を「安保法制や共謀罪に異を唱えた学者たち」と指摘し、「菅政権は『説明責任』を果たさないこともまた(安倍政権から)継承したようです」と批判。
「菅首相は総裁選前のテレビ討論会で『政権の方向性に反対する官僚は異動』と公言していました。その矛先が学者、研究者に向けられたのです。次にその牙はどこに向けられるのでしょうか?」と菅政権の姿勢への懸念を示し、「この問題は、学問の自由への侵害のみにとどまりません。これは、表現の自由への侵害であり、言論の自由への明確な挑戦です。(中略)今回の任命除外を放置するならば、政権による表現や言論への介入はさらに露骨になることは明らかです。もちろん映画も例外ではない」と危惧した。
さらに、ナチスに抵抗し、強制収容所に送られたドイツの牧師マルティン・ニーメラーの「ナチスが共産主義者を攻撃し始めたとき、私は声をあげなかった。なぜなら私は共産主義者ではなかったから。次に社会民主主義者が投獄されたとき、私はやはり抗議しなかった。なぜなら私は社会民主主義者ではなかったから。労働組合委員たちが攻撃されたときも、私は沈黙していた。だって労働組合員ではなかったから。そして彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる人は一人もいなかった」という有名な詩を引用。
「私たちはこの問題を深く憂慮し、怒り、また自分たちの問題と捉え、ここに抗議の声を上げます。私たちは、日本学術会議への人事介入に強く抗議し、その撤回とこの決定に至る経緯を説明することを強く求めます」と締めくくっている。
参加した22人は次の通り。
青山真治(映画監督)
荒井晴彦(脚本家・映画監督)
井上淳一(脚本家・映画監督)
大島新(映画監督)
金子修介(映画監督)
小中和哉(映画監督)
小林三四郎(配給)
是枝裕和(映画監督)
佐伯俊道(脚本家・協同組合日本シナリオ作家協会理事長)
白石和彌(映画監督)
瀬々敬久(映画監督)
想田和弘(映画監督)
田辺隆史(プロデューサー)
塚本晋也(映画監督)
橋本佳子(プロデューサー)
古舘寛治(俳優)
馬奈木厳太郎(プロデューサー・弁護士)
三上智恵(映画監督)
森重晃(プロデューサー)
森達也(映画監督)
安岡卓治(プロデューサー)
綿井健陽(映画監督・ジャーナリスト)