羽生九段100冠へ静かな闘志 竜王戦七番勝負開幕「悔いの残らないシリーズに」

 将棋の羽生善治九段(50)が豊島将之竜王(30=叡王との二冠)に挑戦する、第33期竜王戦七番勝負第1局の前夜祭が8日、東京・渋谷のセルリアンタワーで行われた。開会前には、9、10日に同所内の能楽堂で行われる第1局の検分も実施。タイトル通算100期をかけ、2年ぶりとなるタイトル戦の舞台を前に、羽生九段は「悔いの残らないシリーズにしたい」と静かに闘志を燃やした。 

 久々にたどり着いたタイトル戦の前夜祭。前人未到の“究極の頂”に挑む羽生九段は、第一人者にふさわしい落ち着きを漂わせながら「今持っている力を出し切って、悔いの残らないシリーズにしたいと思っています」と意気込みを示した。

 新型コロナウイルスの感染拡大は将棋界にも大きな影響を与え、一般客を入れての前夜祭は今年度で初めて。羽生九段はコロナ禍でもタイトル戦が行われることに感謝を示しつつ「限られた時間ですけど、自分なりに一生懸命やりたい」と静かに闘志を醸し出した。

 名人戦とともに将棋界の最高権威とされる竜王戦。羽生九段にとっては1987年に19歳で初めて獲得したタイトルでもあり、2017年に史上初の「永世七冠」を決めたタイトルでもある。一方で18年には失冠して27年ぶりの無冠となる屈辱を経験。通算100期をかける舞台としては、この上ない棋戦だ。

 豊島竜王とはこれまで、公式戦では33戦17勝16敗とほぼ五分。タイトル戦では3回対戦して2勝1敗だが、18年の第89期棋聖戦では2勝3敗で防衛に失敗し、タイトル100期を逃すとともに豊島竜王に初タイトル獲得を許した。それだけに、リベンジを果たしておきたい思いは強い。

 20歳年下の竜王に挑む今シリーズ。現在のタイトルホルダーは全員、30代以下だが、挑戦を決めた際には「同年代の人たちも変わらずに活躍している。世代にこだわらず、目の前の一局を一生懸命やっていく」と語った羽生九段。歴史に残る大一番へ、“平成の棋神”の逆襲が始まる。

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