トランプ米大統領（７４）は１０日、ホワイトハウスで開いたイベントで演説し、熱狂的な支持者を前に再選への支持を訴えた。今月２日に新型コロナウイルス感染を公表して入院後初めての行事参加で、本格的に活動を再開した。専属医は演説の後、トランプ氏の症状が改善し他人にウイルスを感染させる恐れはなくなったと発表。ただ陰性とは明示しておらず、米主要メディアは懐疑的な見方を示した。

　「アメリカ大統領の登場です」。アナウンスに促されてホワイトハウスのバルコニーに現れたトランプ氏は、マスクを外すパフォーマンスで、庭に集まった支持者らにアピールした。「体調は最高だ。みんなはどうだい？」と健在ぶりを誇示。「悪い中国ウイルスをやっつける」などと気勢を上げた。

　１１月の大統領選を「最も重要な選挙だ」と強調。対立候補、民主党のバイデン前副大統領が左派的な政策を掲げているとして「わが国を社会主義国家にしてはならない」と訴えた。黒人差別解消を求めて全米に拡大したデモが一部暴徒化したのを踏まえ「法と秩序が必要だ」とし、保守層の支持固めをはかり、選挙戦での劣勢挽回を狙った。庭に集まった数百人の支持者らはマスクをしていない人も多く、密状態で歓声を上げた。

　トランプ氏の専属医は、１０日朝のＰＣＲ検査の結果、他人に感染させる恐れがなくなったとし、症状も改善しているため隔離の必要はないと説明した。ただ陰性とは明示しておらず、見切り発車への疑念は残る。

　ホワイトハウスでは９月２６日に屋外で開催した大人数の式典で、トランプ夫妻を含め出席者の感染判明が相次いだ。拙速な行事再開でスタッフや参加者らの感染を招きかねないと専門家からは批判の声が上がっている。

　トランプ氏は１２日、激戦州の一つで大票田の南部フロリダ州で選挙集会を再開する。１３日には東部ペンシルベニア州、１４日には中西部アイオワ州でも開催。急ピッチで各州を遊説して回り、トランプ氏の隔離中に各州で会合を重ねてリード拡大を図ったバイデン氏を追い上げたい考えだ。