LE VELVETS コロナ社会への祈りを込めた新作とツアーへの思い明かす
男性4人組の人気ボーカルグループ「LE VELVETS」がニューアルバム「PRAYLIST」を21日にリリースし、それに先立つ16日に東京・かつしかシンフォニーヒルズモーツァルトホールで同名の全国ツアーをスタートさせた。新型コロナウイルスに世界が脅かされる今、「PRAY(祈り)」とお気に入りの曲を集めた「PLAYLIST」をミックスしたタイトルを冠した新作とツアーへの思いを、最年長の宮原浩暢(41)に聞いた。
◇ ◇
LE VELVETSのメンバーはバリトンの宮原とテナーの日野真一郎(38)、佐賀龍彦(39)、佐藤隆紀(34)で、全員が音大声楽科卒、身長180センチ以上。2014年のアルバム「むかしは、今」で日本レコード大賞企画賞を受賞するなどグループとしての活動と共に、佐藤が「レ・ミゼラブル」で主人公ジャン・バルジャンを演じるなど、それぞれがミュージカルの最前線でも活躍する実力派だ。
宮原はアルバムタイトルについて、「お気に入りの曲を集めた(PLAYLIST)」という意味と、新型コロナ禍に遭った世界を「浄化したい、皆さんを元気づけたいと祈った(PRAY)」という意味を重ねた造語だと説明。「お客さまが癒やされたり、元気になったり、無事であること」への祈りを込めたという。
全7曲の選曲に、その思いは表れた。
冒頭の「You Raise Me Up」は12年のメジャーデビューアルバム「Le Velvets」収録曲の再演。「あなたがいるから僕は強くなれる、戦っていける」というメッセージが込められている。
2曲目「アヴェ・マリア」、6曲目「Hallelujah」は宗教曲の定番で、現在の状況下で「一番刺さる曲」としてチョイス。クラシックの人気曲がベースの3曲目「夜想曲」と4曲目「四季~花見鳥」は、前者が「愛の歌」、花見鳥=うぐいすがタイトルの後者は「必ず春は来るというメッセージソング」になっている。
5曲目「きずな」は、LE VELVETSも参加してきた「山口きずな音楽祭」のテーマソング。「大勢の人の命がつながって自分がいる」、「一人一人の存在は大きい」、「命の大切さ」といったことが歌われる。
最終曲には「自分たちとはあまりに違うジャンルで、冒険して」と、アース・ウインド&ファイヤーの大ヒット曲「宇宙のファンタジー」を選び、「しっとりしがち」な祈りのアルバムにスパイスを加えている。
宮原が「一見しっとりしているけど、聞き込めば聞き込むほど味が出るようなアルバム。1曲1曲パワーもあるし、自分たちの良さもすごく出ているし。エンターテイナーとして色んなことをしていて、ポップスあり、クラシックあり、アカペラあり、バラエティーに富んでいます」と自負する作品に仕上がったが、新型コロナがまん延し始めてからここに至るまでは、暗中模索だった。
「最初はすごくショックを受けました。自宅待機の時期もあり、こんなことが起きちゃうんだって」
メンバーそれぞれの地元で行ってきた恒例の凱旋コンサートや、各自が出演するミュージカルが延期や中止になるなど、立ち止まることを余儀なくされたLE VELVETS。「会って話したらすぐ解決することでも、LINE上の文脈だと人によって取り方が違って、文字面だけだと、何を言わんとしているんだろう?と困惑したり」と、コミュニケーションにも支障を来すことがあった。
一方で、ステイホーム期間はグループを「新たに見つめ直す時間にもなった」という。
「グループとして、もう13年目。ずっとやってきたことで、なれ合いもあると思う。それぞれのことも分かった上で、もう一つ大きくステップアップするために何が必要か、すごく考えました」
ステイホーム期間が明け、「会って動くと早い」と、滞っていたアルバム制作も再起動。本来は映画音楽をテーマにしたアルバムになるはずだったといい、今回のような内容には、コロナ禍がなかったら「絶対にならなかったと思います」と、制作過程で状況がビビッドに反映されたことを明かした。
16日にツアーが開幕したが、宮原は「こんなに期間が空いて、待っていてくれるだろうか?という不安があった」と打ち明けた。
ツアーは1席ずつ間隔を空けるなどニューノーマルに対応した形で行われる。観客数は通常の半分だったが、ファンからのエネルギーは変わらなかったという。初日を終えた宮原は「ファンの方たちは、待ち望んでいた感じがすごくあった。曲終わりに拍手がなかなか鳴り終わらない。感動しました。尊い時間だと思いました」と、ファンとの固いきずなを改めて感じていた。
今後のツアー日程は次の通り。
◇10月31日(土)=京都・文化パルク城陽
◇11月1日(日)=大阪・メルパルクホール大阪
◇11月14日(土)=宮城・トークネットホール仙台
◇11月23日(月・祝)=福岡・ももちパレス
◇11月25日(水)=愛知・名古屋市芸術創造センター
◇11月29日(日)=東京・Bunkamuraオーチャードホール