「踊る大捜査線」シリーズで知られる本広克行監督の最新作で、女優で映画監督の小川紗良（２４）が主演した映画「ビューティフルドリーマー」が今月７日、公開された。本広、押井守、小中和哉、上田慎一郎という日本映画をけん引する４監督が結集した“監督絶対主義”を掲げる新映画レーベル「シネマラボ」の第１弾作品。その主演という大役を任された新鋭の素顔に迫った。

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　小川が自ら映像を撮り始めたのは、高校生の時だった。

　「行事のドキュメンタリーを撮り始めたのが最初だったんです。上映会を学校でやって身近な友達に見てもらって、それで映像で伝えることの面白さみたいなもののを感じたのが最初でした」

　一方で、「ちっちゃい時から興味があった」、「やってみたいという思いもずっとあった」という、演じる側にも回った。高校２年生の時に出演したミュージックビデオで女優デビューし、大学時代は監督と主演を兼任した作品も２本ある。

　「高校に入った時に、たまたま学校も都心の方にあって、入り口が近くになったというか、ちょっとやってみようって踏み出すきっかけになったので、高校生の時にやっと始めたっていう感じですね。最初は雑誌に応募したんです。雑誌きっかけで事務所に所属して、女優の仕事を始めたっていう感じです」

　女優としては今年、フジテレビ「アライブ　がん専門医のカルテ」やＮＨＫ総合「ディア・ペイシェント～絆のカルテ」といった連続ドラマにレギュラー出演するなど、既に頭角を現しつつある。監督としては初の長編作品「海辺の金魚」（公開待機中）を撮り終えており、今後も「両方やっていきたい」と両立を目指している。

　田中絹代やアンジェリーナ・ジョリーのように女優と監督を兼ねる人もいるが、決して多くはない。小川は俳優と監督の２つを「大枠で見ると、映画作りの一部っていう意味では、監督も役者も同じだと思っていて。作り手の１人というか。なので、大きな目で見た気持ちでは一緒なんです。映画作りが楽しいっていう」ととらえた上で、「実際にやることとか、視点は変わってくるので、そのバランスを自分でうまくコントロールできるようになればいいな」と考えている。

　監督として、俳優として、心がけていることを聞いた。

　「脚本を何度も書いたり、いろいろ稽古したり、たくさん準備して現場に行くんですけど、現場ではなるべく目の前で生まれたことをちゃんと拾えるように。ある種、準備してきたことを捨ててじゃないですけど、柔軟に目の前のものを見て見極めて、映画に取り入れていけたらいいなと思っています。俳優としてもそうかもしれない。セリフを練習して覚えていくんですけど、現場でロケ地の空気だったり、相手役のテンポ感だったり、実際に演じてみないと分からないことがたくさんあるので、そこで生まれた生の感情をちゃんと出せるようにしたいなって思っています」

　監督・小川紗良の特徴については「もちろん、まだ本数が少ないので、これから出てくる部分もあると思うんですけど。現時点で色か分からないですけど、たぶん、フィクションなんですけどちょっとドキュメンタリー性があるようなものが好きだし、取り入れたいって思ってるかな」と自己分析している。

　尊敬している監督、俳優は多いといい、今回の取材では監督で大林宣彦氏、俳優で池脇千鶴の名を挙げた。

　「大林監督は尾道三部作を撮られているじゃないですか。ああいうふうに、自分の好きな土地で、作品を撮り続けるみたいなことはやってみたいなってずっと思っていますね。女優としても監督としても、いつかご一緒してみたいなって思っているのは池脇千鶴さん。今出ている作品もすごく好きで、憧れはありますね」

　新型コロナウイルスの感染拡大によるステイホーム期間が明けてから「名画座とか、ものすごく行きました。こないだ初めてスクリーンで『ヤンヤン　夏の思い出』（エドワード・ヤン監督、２００２年の台湾映画）を見ました」という小川。「人生の全てみたいな感じでしたね。あれこそホントに残っていくものだなって感じがしました」と述べ、それこそが映画にひかれる理由なのだという。

　「映画の特性で一番大きいところって、残っていくことなのかなって思っていて。映画って一番、その作品の物語だったり時代性だったり社会性っていうのが、すごく残って、見続けられていくものだなって思えるので。流れていくものじゃないというか。そういう映画を作ることで、何かを今後に残せるかもしれないっていうところが、私は面白いのかなって思います」

　若き女優にして映画監督は「時代を超えてだったりとか、国とか文化を超えて届く映画に、とにかく携わり続けたい」と、未来を見据えている。