「鬼滅の刃」ヒット継続の裏に二の矢、三の矢の巧みさ…“おまけ戦略”も効果的
激動の2020年にあって、最大の話題作となったのが映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」だ。10月16日の公開からわずか3カ月弱で、2001年公開の「千と千尋の神隠し」の記録を更新し、興収日本歴代1位の座を奪った。
原作の人気が極めて高く、テレビアニメ版も成功した上での、満を持しての劇場版だっただけに、ある意味当然の大ヒットだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で日本のエンターテインメント界が青息吐息である現状、ほぼ“一人勝ち”というこの状況は、やはり驚異的だ。
大ヒットの理由は至るところで分析されているが、配給元である東宝の常務取締役・市川南氏は昨年末、原作の優秀さや上映回数の多さに加え、企画・制作を担当した制作会社・アニプレックスによる練りに練られた宣伝戦略を挙げた。
とりわけ、市川常務が「上手だなと思う」と舌を巻いたのが、劇場来場者限定で配布されるプレゼントだ。11月14日からの第1弾「ufotable描き下ろしA5イラストカード 壱」に始まり、12月26日からの第4弾「キャラクターデザイン:松島晃描き下ろしメモリアルボード」まで、期間限定で用意されている。
爆発的なヒットの瞬間に満足するのではなく、それを継続させる二の矢、三の矢の巧みさ。これは、アニメ版プロデューサーを務めるアニプレックスの高橋祐馬氏が、同社の宣伝部チーフまで務めていたことと無縁ではないだろう。市川常務も「何週か置きに、入場者プレゼントがある。マニアの方から一般の方が喜びそうなものを非常に緻密に用意した」と絶賛した。
ライトユーザーからヘビーユーザー、そしてコレクターの心理までつかみ、さらに複数回の来場にまでいざなう“おまけ戦略”。「鬼滅」を社会現象にまで発展させ、天下の東宝幹部を驚かせたこの戦略は、今後の興行界の基本戦略となっていきそうだ。(デイリースポーツ・福島大輔)