大正-昭和-平成-令和をしなやかに生き抜いた大路三千緒さん【悼む】
宝塚歌劇団で組長を歴任しNHK連続テレビ小説「おしん」(83~84年)の祖母役などで知られる女優の大路三千緒(おおじ・みちお、本名・神山美知子=かみやま・みちこ)さんが12日午後6時半、脳梗塞(こうそく)のため兵庫・伊丹市内で死去していたことが18日、分かった。100歳。東京都出身。
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100歳を超えてなお、元タカラジェンヌらしい気品と、にじみ出るかわいらしさがあった。40年以上、男役をしてきた癖なのか、カメラを向けると笑顔を見せ、自然なポーズも取ってくれた。
「伯母がイライラしたところは見たことがない」とめいの葦笛るかさんも証言するほど、穏やかな人柄。古い宝塚ファンも「人柄のにじみ出た舞台。楽屋から出てきた時も、ファンに笑顔で優しかった」と声をそろえる。
言葉も含蓄に富んでいた。「『1番』の思い出を聞かれたら困るの。小さなことが幾つもあって、それが重なっているから。人生ときたら難しいの」「すっかり忘れるのが上手になっちゃって」。大正、昭和、平成、令和をしなやかに生き抜いた人の言葉に、思わずうならされた。100歳の誕生日を迎えた日にも「99歳さようなら、100歳こんにちは」とちゃめっ気たっぷりだった。
そんな大路さんが宝塚以外で忘れられない作品は「おしん」だったという。テレビでの大ヒットを受け、舞台でも上演。舞台では、テレビでおしんの子供時代を演じた小林綾子が成長し、青年期を演じた。「おしんは変わったけど、私は同じ役だったの」と懐かしんだ。
「おしん」の祖母、「阿修羅のごとく」の母親…ヒロインではないけれど、印象的な役をこなしてきた。役を言うと「ああ、あの女優さん!」と思い当たる人も多いはず。ご冥福をお祈りいたします。
(デイリースポーツ報道部・石川美佳)