「芸能人ってコロナになる人が多いよね。やっぱり仕事で密になってるから？」、「なんだかんだ言って出歩いてるからだよね」といったネットの声がいまも一部にあることに驚く。

　私が知る限り、ドラマの撮影現場でも、バラエティーや生ワイドのスタジオでも、感染症対策はこれ以上ないほど万全に行われている。それでも毎日のように芸能ニュースに新たな感染者名があがるのは、仕事に入る前、全員でＰＣＲ検査を受けているからに他ならない。無症状であっても陽性となると、所属事務所が公表する。他の現場で濃厚接触者となった筧美和子が主演ドラマを降板したというニュースもあった。それほど現場は慎重である。

　が、公表したり、症状の詳細を明かしたりすると、人によっては「売名行為」とたたかれることがあると聞いた。症状が急激に悪化したり、感染経験者の多くが長期の後遺症に悩まされているのは今や周知の事実。そんな恐ろしい病気を売名などに使うはずはない。少し考えればわかることだと思うのだが。

　また、完治して復帰した仕事先や、ようやく前に向いて進んでいこうとＳＮＳで明るい日常を綴ったタレントが「コロナ差別」を受けているとも聞いて、また驚いた。

　たとえば手製の料理画像を投稿すると「ウイルスに感染した人の料理は食べたくない」、「家族がかわいそう」、「俺だったら食べない」というリアクションが来るのだそうだ。杉浦太陽の実体験である。

　私は以前から、芸能人が自身の感染を公表したり、症状や後遺症について明かしてくれたりすることには大きな意味があると言ってきた。経験したことのない倦怠感に襲われること、家族が病室で付き添えないことや最期を看取れないことを教えてくれたのも芸能人。当初、医師でさえも確信がもてなかった「嗅覚や味覚がなくなる」という症状を広く伝えたのも芸能人ではなかったか。

　前述の杉浦は「バイキングＭＯＲＥ」（フジテレビ系）の取材に対し、「ようやく前に向いて進んでいこうかなっていうときに、身体だけじゃなくて心も傷つけるのかと思って、心が折られた感じがあって辛かった」と答えている。彼のコメントが多くの人に届いてほしい。