フジテレビのリアリティー番組「テラスハウス」に出演し、ＳＮＳ上で誹謗（ひぼう）中傷を受けたプロレスラー木村花さん＝当時（２２）＝が昨年５月に死去し、母の響子さん（４４）が人権侵害を申し立てた事案で、放送倫理・番組向上機構（ＢＰＯ）は３０日、放送倫理上問題があったとの見解を発表した。都内で会見した響子さんは、人権侵害が認定されなかったことに「今日の結果は花に申し訳なくて報告できない」と悔し涙を流した。

　ＢＰＯは「出演者（花さん）の精神的な健康状態に対する配慮に欠けていた点で放送倫理上問題があった」と判断するも、人権侵害は認めなかった。響子さんは「３月３０日は花のプロレスデビュー日。本来でしたらたくさんの人におめでとうと言われる日です。そんな日に残念な結果。歯がゆく悔しい」と、声を詰まらせた。

　「花はここにいないので、事実を証明することが難しい。フジテレビは都合の良い説明ができる」と指摘し、「やっぱり花を助けたかったし、無力さを感じています」と、やるせない思いに涙した。

　フジ側とは「連絡はいただいたけど、会っていない」と説明。局からの手紙には「無責任な言葉が並んでいた。まるで自分たちの番組と花の死は無関係という主張だったり、私を攻撃するような言葉もあった」と明かし、「出演者をコマの一つではなく、一人の人間として大切に扱ってほしい」と訴えた。

　花さんには「申し訳ない気持ちで報告できない」とした響子さんは「良い報告ができるようにこれからもやっていきたい」と前を向いた。今後については「さまざまな可能性を検討中」と、代理人弁護士がコメントした。

　花さんは昨年５月２３日に都内の自宅マンションで倒れているのが見つかり、死亡が確認された。警視庁は状況から自殺とみている。

　響子さんは昨年７月、花さんが暴力的な女性のように描かれたなどとして、人権侵害があったとする申立書をＢＰＯに提出。フジテレビは「木村氏を暴力的に描いていない」などと反論し、この事案は昨年９月に審理入りが決定していた。

　また、誹謗中傷に苦しむ人を助けていくＮＰＯ法人「リメンバー・ハナ」の設立会見も行われ、６月を目安に始動することが明かされた。