田中邦衛さん 照れ屋で飾らず、実直でまじめ…長女はNHKワシントン支局長歴任
テレビドラマ「北の国から」シリーズなどで知られる俳優の田中邦衛(たなか・くにえ=本名同じ)さんが、老衰のため3月24日に死去したことが2日、分かった。88歳。田中さんはリハーサルの30分前には必ず現場に来ていた。長女・淳子さんはNHK局員で米ワシントン支局長を務めた。田中さんの人柄を振り返る。
田中さんは照れ屋で、テレビのトーク番組などにはめったに出演しなかった。インタビューでは「俺なんて、なんの取りえもないんですよ」と、とつとつと話した。飾らない人柄で、芝居に対しては実直かつまじめ。俳優仲間からの信頼も厚かった。
リハーサルの集合時間30分前には必ず現場に到着。移動には電車を使い、収録のない日は電車やバスで外出する。時代劇を撮影していた京都の撮影所周辺では、撮影の合間に、着崩した上下ジャージー姿の田中さんが、付き人もスタッフもつけず、一人で商店街を歩く姿がよく見られた。
映画が大好きで「(依頼が)来る順番にやっていた」という。67年に「若者たち」で毎日映画コンクール主演男優賞を受賞後、51歳の時に「居酒屋兆治」「逃れの街」でブルーリボン賞の助演男優賞を受賞。受賞インタビューでは、とっくりのセーター姿で「無残に老骨をさらしても役者として生き続けようと思っています。芸の世界って、のっぴきならないところなんですよ」と語っていた。
家庭では2歳下の妻・康子さんとの間に2女をもうけた。
康子さんとは、姉が俳優座の同期だったことで知り合った。既に「若大将シリーズ」が始まっていた頃だったが生活は苦しく、アルバイトで茶わんを売り歩き、結婚2カ月前から康子さんの実家に住みつき、50歳近くになっても実家の2階に住んでいたという。
NHK局員の長女・淳子さんは米ワシントン支局長、BS「国際報道2016」のキャスターを歴任した。