田中邦衛さん逝く 88歳、老衰で…ドラマ「北の国から」、映画「仁義なき戦い」
テレビドラマ「北の国から」シリーズなどで知られる俳優の田中邦衛(たなか・くにえ=本名同じ)さんが、老衰のため3月24日に死去したことが2日、分かった。88歳。岐阜県土岐市出身。葬儀は静かに見送ってほしいとの田中さんの希望で、家族葬で執り行い、お別れの会は予定していない。近年は芸能界の表舞台から遠ざかり、体調が心配されていた。家族は「最期の日まで、皆様からの励ましを支えに、前向きに生きる気力と、周囲への感謝を持ち続けていました」と伝えた。
強烈な存在感を発揮した名優が、静かに人生の幕を閉じた。この日、家族が報道各社宛のファクス書面で公表した。近年は体調不良が伝えられていたが、「素晴らしい医療・介護チームのサポートのもと、私たち家族も、共にかけがえのない時を過ごすことができました」と報告。家族に見守られながら、安らかに旅立ったという。
最後に公の場に姿をみせたのは、2012年8月、「北の国から」などで共演した盟友・地井武男さんのお別れの会。俳優としての活動は、10年公開の映画「最後の忠臣蔵」への出演以降、遠ざかっていた。
13年11月に週刊誌で“俳優引退”が報じられ、当時テレビの取材に答えた妻・康子さんは「演技をする夢は夫婦2人でずっと持って生活しています。引退も何も、田中邦衛の人生そのものが役者ですから」と語っていた。
田中さんは麗澤短期大学時代に友人の影響で演劇に興味を持つようになり、在学中に俳優座養成所の試験を2度受けたが不合格。地元の中学校で代用教員になり、1955年、三度目の正直で俳優座養成所に合格し役者人生をスタートさせた。
61年にはじまった映画「若大将」シリーズに、主演の加山雄三(83)と張り合う青大将役で出演。愛すべきキザなキャラクターが人気となり、不動のレギュラーとなった。
シリアスからコメディーまで幅広い芸域を持ち、“主役キラー”とも呼ばれた。
81年にスタートし、倉本聰氏(86)が脚本を手掛けた「北の国から」の黒板五郎役で、国民的俳優へ登り詰めた。少し口をとがらして、とつとつと言葉をつなぐ、武骨で人間くさい父親を熱演し、愛された。役作りには葛藤もあった。演出を手掛けた杉田成道監督から厳しい指導を受け「現場ではポツンとしていた。友達はキタキツネだけ」と振り返ったこともあるが「裸の気持ちで演技する」ことを覚えた。「(舞台の)富良野に行くとほっとする。『五郎さん』って呼ばれるとやっぱりうれしい」と話していた。
印象的な名場面の数々を残して、俳優としての役目を全うした。