小林亜星さん死去 生涯作曲数8000曲 ドラマ「寺内貫太郎一家」で名演技
「北の宿から」などを手掛けた作曲家で、ドラマ「寺内貫太郎一家」の主演でも知られる小林亜星(こばやし・あせい)さんが、5月30日に心不全のため亡くなっていたことが14日、分かった。88歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で執り行った。コロナ下であることを考慮し、お別れの会は予定していない。亜星さんは生涯作曲数が8000曲にも及ぶとされ、アニメやCMでも多くのヒットソングを生んだ。
数々の名曲を生み出し、名作ドラマで主演し、芸能史を彩った亜星さんが静かに旅立った。
関係者によると、亡くなる前日まで元気な様子で、普通に食事を取って酒も楽しんでいたという。30日に自宅で倒れ、夫人に付き添われて都内の病院に緊急搬送されが、そのまま帰らぬ人となった。
高齢であるため、近年は体が弱り歩くことを苦手にしていたが持病はなかった。コロナ禍となって以降は仕事をセーブし、外出も控えていたという。「日立の樹」などでタッグを組んだ作詞家・伊藤アキラさん(享年80)の訃報が伝えられた先月22日には、追悼コメントを発表したばかりだった。
亜星さんはラジオで聴いたジャズに魅了され、学生時代からバンド活動に取り組んでいたが、親の意向で慶応大学医学部に進学。親に内緒で転部し、卒業後は製紙会社に就職するも、仕事を辞めて、作曲家の故服部正さんに弟子入り。本格的に音楽の道へ進んだ。
1日3曲のペースで作曲していた時期もあり、総制作数は8000曲ともいわれるが、「得意なのはコマーシャルソング。好きなのは子供の歌」と自負していた。初めてCMソングを手掛けたのは1961年、妹が勤めていた縁で服飾メーカー「レナウン」の、「ワンサカ娘」を作曲。63年には「狼少年ケン」でアニソンに初挑戦。演歌・歌謡界でも功績を残し、76年、都はるみ(73)が歌った「北の宿から」で日本レコード大賞を受賞した。
俳優としての代表作は、体重100キロ超の巨漢を買われ、主役に抜てきされた「寺内貫太郎一家」(74年放送)。他にも映画「冬の華」、ドラマ「塀の中の懲りない面々」などに出演。2002年のNHK連続テレビ「さくら」では、ヒロインの祖父役を演じた。「象印クイズ ヒントでピント」で男性チームのキャプテンを務めるなど、タレントとしても活躍。多才ぶりを発揮、お茶の間から愛され続けた存在だった。