バッハ会長、原爆の凄惨さに絶句「少し落ち着かせてほしい」
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、国連による五輪休戦決議がスタートした16日、被爆地広島の平和記念公園を訪問し、「東京五輪・パラリンピックはより平和な未来への希望の光となると確信している」と、スピーチした。
同地にある原爆資料館を視察。核兵器による惨状を伝える資料の数々に、展示を見終えた後「少し落ち着かせてほしい」と言葉に詰まり、被爆者の梶矢文昭さんとの面会を前に、気持ちを整える時間をとったという。その後のスピーチでは「今日、私はこの場所に追悼されているあらゆる方を思い出すためにきた。平和の使命を再確認した。今日、この地を訪問して大事な人としての感情を持つことができた。全ての人々はここを訪れるべきだ。神の願いがどこにあるのか。平和の重要性を感じることができる」と、思いを語り、「(五輪では)205の国・地域、そして難民選手団が東京と日本から世界にむけて非常に重要な揺るぎないメッセージを送ってくれる」と、誓った。
米国のオバマ元大統領や、ローマ法王の来訪時同様、同公園への立ち入りは一時制限され、慰霊碑への献花などを行い、原爆資料館の視察や被爆者とも対面した。園内には多くの警察官が目を光らせる厳戒態勢。到着直前には雨が降り始め、抗議デモの「ゲットアウト(出ていけ) バッハ!」「バッハは広島を利用するな」「命より金の五輪は中止しろ」などのシュプレヒコールも響く中で献花を行い、傘もささず、約1分間黙とうした。
バッハ会長は8日に来日。3日間の隔離を終えて、現在は11日間の行動規制期間に入っており、用務先を指定した形での活動が認められている。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大が続く緊急事態宣言下の東京から広島への移動などに批判的な声も上がっていたが、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長は「五輪の根本原則は平和。被爆国である日本が、広島と長崎から平和のメッセージを発信してほしいという依頼を地元からいただいている。国内外に平和を訴えていただきたい」と、意義を強調していた。同日、ジョン・コーツ副会長も被爆地長崎を訪問した。
五輪休戦期間は五輪開幕1週間前の7月16日からパラリンピック閉幕1週間後の9月12日までの59日間。19年12月の国連総会で186カ国の共同提案による決議で採択された。