日本テレビスポーツ局主任・山下剛司さん コロナ禍の五輪感動、興奮伝える使命増大

 東京五輪の開幕まであと3日となりました。新型コロナウイルスの影響で、ほとんどの会場が無観客となる異例の大会。デイリースポーツでは、放送局や放送人の取り組みや思いを紹介する連載「東京五輪 放送の現場から」をスタートさせました。第1回は、日本テレビスポーツ局主任で「日テレ系東京オリンピック」のチーフディレクターを務める山下剛司さん(39)です。

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 高揚感と不安。演出のリーダーを務める山下さんの中には、相反する感情が交錯している。期間中はトータル86時間超、1日でも16時間超の中継を担う。「想像できてないんですよね。本当に放送できるのかな、みたいな」。未体験のロングラン放送。笑顔を交えながらも、緊張感も口にした。

 無観客となったことで、果たす役割は増したと考えている。国民はもちろん、選手の家族ですら画面を通してでしか雰囲気を味わうことはできない。「テレビとして伝えることの喜びと、逆に責任感や使命というのを感じてほしい」と自身のチームのメンバーに伝えているという。

 最先端の映像技術で臨場感を伝えるのはもちろんだが、山下さんは“人間”そのものに重きを置く。「選手へのリスペクトと、支える人へのリスペクトというのを演出の中では想像している」。大舞台へ向かう軌跡や、アスリートを支える家族や恩師らをフィーチャーし、五輪の素晴らしさに投影していく。

 山下さん自身、高校2年時の98年、長野五輪で清水宏保選手や船木和喜選手の金メダルに感動。中継の中で金メダルへの過程を知り心はさらに揺り動かされた。「人の心を充実させる、人生に豊かさをもたらす一生消えない興奮と感動を与えられるんじゃないかと」。スポーツ報道を志すきっかけとなった出来事。その信念は、今も抱き続けている。

 “推し”の競技の1つは女子マラソン。同局でも中継される。実際に開催コースを歩いたといい「美しい北大の狭いコースに何十人のランナーが入った時にどういう映像になるのか、非常に楽しみ」。また、北海道大学構内での細かいカーブの連続など、複雑なコース設定にドラマが潜むとし「日本の選手は実際に走っている。地の利を生かしてほしい」と、04年のアテネ五輪の野口みずきさん以来となる同競技のメダル獲得を期待した。

 五輪をきっかけにスポーツ報道を志して23年。自国開催の五輪という舞台で、夢がかなう。順風な中での五輪開催ではなく、コロナ禍での取材方法にも苦心してきた。本番はもう目前。「自分がもらった感動、興奮を、今度は僕らが伝えるということで、しっかりと使命を果たしていきたい」と揺るがない熱意を中継に吹き込んでいく。

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