頑張れ一二三&詩 柔道・阿部兄妹のルーツを探る 金メダル獲得へ地元が熱烈エール
1964年以来2度目の東京オリンピックが開幕した。
柔道女子52キロ級で、日本勢では同階級初の金メダルを狙う阿部詩(21)=日体大=は、兄で男子66キロ級代表の阿部一二三(23)=パーク24=とともに25日に登場する。兄妹で金メダルを。地元の兵庫・和田岬でも、快挙の瞬間を待ち望んでいる。
2人が通った小学校近くには、クレープや駄菓子を販売する「淡路屋」がある。店主の伊藤由紀さんは「特に詩は毎日のように来てくれていましたね」と懐かしむ。授業終わりの一時を友達と過ごし、走って練習する柔道に通う日々。「遊んでいても練習時間はきっちりと守る。そんな意志の強さ、すごさは昔からありましたね」と笑う。
小学生の頃から地元では有望な選手。高学年になった詩に、伊藤さんは「あなたは絶対に有名になるから、ここに書いといてや」と壁にサインを頼んだ。十数年がたち、油性マジックの跡が消えたころ、フラっと詩が店を訪れた。大きくなった身長分、今度は高い位置にサインを頼んだ。
「やっぱりかわいいですよね。試合も全部見ていますけど、親族でもないのにドキドキです。もう、正座しないと見られない。日本を背負うプレッシャーも大きいですよね」
2人が帰省した今年1月には、「三石神社」で必勝祈願を行った。幼少期からお祭りに参加し、同社の神輿祭を担いだ。毎年のように参拝に訪れるが今年、一二三は絵馬に「最高に輝く」、詩は「東京五輪優勝 自分に勝つ!」と記した。宮司の小林友博さんは、「正月に書いたものですから、普通は後ろの方に隠れちゃうんです。でも、誰かが動かすんでしょうね。いつも一番前にあります」と笑う。町全体が応援している証しでもある。
参拝時、詩は小林宮司に約束したという。「絶対に金メダルを取って来年、首にかけてお参りにきますね」-。日本柔道で初の兄弟五輪出場。当然、共に優勝すれば、前人未到の快挙になる。小林さんは強く願う。「2人とも頑張ってもらいたい。大切なものやから、持ち歩くわけにもいかないでしょうけど、首に掛けた金メダルが見たいですね」。地元の熱いエールが、2人の金ロードを支える。