五輪映す街頭テレビに人だかり 64年大会前に設置、半世紀またいだ歓声

 東京五輪開催中、日本最大級の日雇い労働者の街、大阪市西成区の「あいりん地区」では、街頭テレビで競技を楽しむ人たちの姿があった。昭和時代のテレビが普及していない頃にタイムスリップしたかのような光景。1964年の東京五輪の際、既に設置されていたことがうかがえる資料もあり、半世紀以上も前に同じ場所で声援が送られた可能性がある。

 7月29日夕、萩之茶屋南公園(通称・三角公園)の街頭テレビの前に10人ほどが集まり、柔道女子78キロ級の決勝戦を見守っていた。浜田尚里選手(30)が優勝を決めると「やった!」と歓声が上がった。近所の男性(60)は「自室にもテレビはあるけど、せっかくの五輪。誰かと一緒に見ると、より盛り上がる」と笑顔を見せた。

 西成区の資料には、64年五輪直前の同年9月に設置されたとの記載がある。地元の鍛治三郎さん(77)は当時のあいりん地区を振り返り、今回の新型コロナウイルス流行下と同様に「手放しで五輪を喜んでいる状況ではなかった」と語る。地区では61年、大阪府警の事故対応などに不満を持った労働者の暴動が発生。その後も続き、治安は悪化していた。

 西成区の担当者によると、70年代には西成署がテレビを管理していたという。暴動は繰り返されたが、鍛治さんによると、そんな中でもプロ野球やプロレスが中継されると人だかりができた。

 2018年春に故障した際、存続させるかどうかが議論になった。日雇い労働者は減少したが、一部に強い希望があり、約1年後に地元の簡易宿泊所や町内会でつくる合同会社が管理を引き継いだ。10人ほどだった視聴者は五輪開催中、20~30人に増えたといい、同社の牧憲一事務局長(51)は「ここは労働者の憩いの場。必要とされる限り、テレビを残していきたい」と話した。

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