名優・辻萬長さん死去 77歳、腎盂がん 大河「鎌倉殿」降板を7月に発表
俳優・辻萬長(つじ・かずなが)さんが18日、腎盂(じんう)がんで亡くなった。77歳。所属事務所が23日、書面で発表した。辻さんは今年7月16日、腎盂がんの治療に専念するため、来年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(作・三谷幸喜)を降板することを発表していた。主人公・北條義時(小栗旬)の祖父・伊東祐親役で出演予定だった。
遺作舞台となったのは、昨年7月公演の三谷幸喜作・演出による「大地」。故・井上ひさし氏からバトンを受け取った三谷氏が辻さんに当て書きした役で、俳優人生のラストにふわさわしい作品となった。舞台の最後には「観客無しで演劇は成立しない」という趣旨の台詞があり、コロナ禍からの再開公演にふさわしい、演劇人と観客の思いを詰め込んだ台詞として観客の胸を打った。
辻さんは井上ひさし氏の作品に貢献。2010年に井上氏が無くなった後も、井上氏の遺志を伝え続けた。2016年に亡くなった世界的演出家・蜷川幸雄氏の葬儀では、「自分は稽古を続け、蜷川作品をより深める」と稽古場を離れず、最後の蜷川氏の演出作品「尺には尺を」を作り上げた。