村上春樹氏 小川洋子氏と母校・早大で朗読会
早稲田大(東京都新宿区)に今月開館した国際文学館(村上春樹ライブラリー)で、同大出身の村上さんと作家小川洋子さんによる朗読会が13日までに開かれ、2人は「小説の言葉でしか説明できないものを書いている」などと語り合った。
抽選で選ばれた学生ら15人が参加。「コロナが収束していないので人数を絞った。でも親密な雰囲気でいい」とあいさつした村上さんと小川さんが、自作を2作ずつ朗読した。兵庫県育ちの村上さんは、阪神大震災をモチーフにした「アイロンのある風景」の一部を関西弁で朗読した。
1980年入学の小川さんは、前年にデビューした村上さんの新作が出る度に、友人らと「もう読んだ?」と声を掛け合った逸話を紹介。村上さんは「(文壇の)主流の純文学から外れたところにいて、風当たりが強かった」と振り返った。
質疑では、人生経験が執筆に与える影響を聞かれた村上さんが「想像力というのは記憶。記憶が絡み合って想像力になる。そういう意味では大事だが、いくら経験を積んでもうまく組み合わせられない人は書けない」と述べ、小川さんは「心の中に記憶を物語にするための装置があって、この装置が未熟だと、出てきたものもつまらない」と応じた。
思い入れのある自作の登場人物を聞かれた村上さんは「思いつかない」と回答。「書いている時は身近にひしひし感じるが、終わると本と一緒にしまい込まれて忘れちゃう。ただ原型は残っていて、別の人格をまとって出てくることはある」などと語った。