瀬戸内寂聴さん 「戦争は全て人殺しです」反戦訴え続ける
「夏の終り」「かの子撩乱」など愛と人間の業を見詰めた小説や人々の心に寄り添う法話で知られ、文化勲章を受章した作家で僧侶の瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)さんが9日午前6時3分、心不全のため京都市内の病院で死去した。99歳。徳島市出身。葬儀は近親者で行う。後日、東京都内でお別れの会を開く予定。先月から体調不良で入院していたという。
瀬戸内さんは社会的な発言、活動も積極的に行い続けた。
終戦直前の7月、母と祖父を徳島市の空襲で失った。「戦争だけは絶対あってはならない」と繰り返し訴え、法話でもたびたび反戦を説いた。1991年の湾岸戦争、2001年の米中枢同時テロとアフガニスタン攻撃の際には、犠牲者の冥福と即時停戦を祈り断食を敢行。03年のイラク戦争では、反戦を表明する意見広告を自費で新聞に掲載した。
14年には作家の大江健三郎さんやルポライターの鎌田慧さんらと「戦争をさせない1000人委員会」を立ち上げ、15年には国会前での安全保障関連法案の反対集会に参加。「良い戦争はない。戦争は全て人殺しです」と訴えた。
核兵器廃絶や反原発、死刑廃止に向けた運動にも積極的に関わった。核兵器廃絶を求める「ヒバクシャ国際署名」の賛同者に名を連ね、日本政府に核兵器禁止条約の批准を呼びかける別の署名の共同呼びかけ人でもあった。東日本大震災後は原発再稼働に抗議し、89歳でハンストに参加。また、東北の沿岸部を訪れ、法話などで被災者に寄り添った。
虐待や性暴力の被害に遭っている女性を支援する全国ネットワーク「若草プロジェクト」の呼びかけ人代表も務めた。国家の横暴によって犠牲になる大衆に寄り添う姿勢は一貫していた。