「岩波ホール」7月末で閉館へ「運営が困難」、ミニシアターの先駆け54年の歴史に幕
日本を代表するミニシアター(単館映画館)の岩波ホール(東京・神田神保町)は、7月29日で閉館することを11日、公式サイトで発表した。「新型コロナの影響による急激な経営環境の変化を受け、劇場の運営が困難と判断いたしました」と理由を説明している。
1968年2月、多目的ホールとして開館。故川喜多かしこさん、故高野悦子総支配人が名作映画の上映運動「エキプ・ド・シネマ」を発足させ、74年にサタジット・レイ監督の「大樹のうた」を上映し、ミニシアターの先駆けとなった。
後続のシネマスクエアとうきゅう、シネ・ヴィヴァン六本木(共に閉館)などと共に、商業ベースに乗りにくい、内外の良質な作品を数多く上映。80年代のミニシアタームーブメントをけん引した。
これまでに上映されたのは65カ国、271作品に上る。70年代末~80年代前半にはルキノ・ヴィスコンティ監督の「家族の肖像」「ルードウィヒ 神々の黄昏」「熊座の淡き星影」を日本初公開し、「山猫」の完全版も初公開。同監督の一大ブームを巻き起こした。
その他の主な上映作品に「惑星ソラリス」「木靴の樹」「旅芸人の記録」「大理石の男」「ファニーとアレクサンデル」「ゲームの規則」「アギーレ・神の怒り」「パパは、出張中!」などがあり、「八月の鯨」「宗家の三姉妹」などロングランヒットも多い。
岩波ホールは「54年間の長きにわたり、ご愛顧、ご支援を賜りました映画ファンの皆様、関係者の皆様に心より御礼申し上げます」と謝辞を述べている。