西郷輝彦さん 「完全復活した姿で」かなわなかった願い 評伝

 歌手、俳優として活躍=1971年撮影
 20年ぶりのコンサートで熱唱=1993年11月
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 大ヒット曲「星のフラメンコ」や主演ドラマ「どてらい男」「江戸を斬る」で知られる歌手で俳優の西郷輝彦(さいごう・てるひこ、本名今川盛揮=いまがわ・せいき)さんが20日午前9時41分、前立腺がんのため都内の病院で死去した。75歳。鹿児島市出身。葬儀は近親者で行う。昨年5月にステージ4の去勢抵抗性前立腺がんを公表し、最先端治療を受けるために渡豪。昨年9月に帰国後も闘病していたが、力尽きた。訃報を受け、御三家の仲間である歌手の橋幸夫(78)、舟木一夫(77)ら芸能界にも悲しみが広がった。

 ◇ ◇

 西郷さんは1947年2月5日、鹿児島県谷山市(現鹿児島市)に生まれた。兄2人を早く亡くしている。76年、デイリースポーツのインタビューでは「子供の頃、役者か歌手志望だった。金になる、スターへの早道と考えて歌手を選んだ」と振り返っている。

 63年に家出して名古屋のジャズ喫茶でボーイをしていた時、相澤秀禎さん(サンミュージック創業者)に「ユーはオーラがあるよ」とスカウトされた。相澤さんの葬儀・告別式では弔辞で「あの時、拾ってもらわなかったら、僕はいない」と述べた。芸名の「西郷」は、第一プロダクション社長の岸部清さんが、鹿児島出身と知って名付けた。

 64年、シングル「君だけを」でデビュー。「リズムとビートの申し子」と呼ばれ、同年、日本レコード大賞新人賞を受賞した。橋幸夫、舟木一夫と共に「御三家」と称され、66年に「星のフラメンコ」が大ヒットした。

 70年代には俳優としても2本の大ヒットドラマシリーズに主演した。関西テレビ・フジテレビ系「どてらい男(ヤツ)」ではど根性の関西商人・モーやん役を演じ、作者の花登筺さんは「歌もうまいが、それ以上に演技者としての素質がある」と絶賛。平均視聴率は30%を超え、西郷さんは「僕の原点で、何十年も心の中にある作品」とした。TBS系の時代劇「江戸を斬る」では主人公の遠山金四郎役を快演した。

 私生活では歌手の辺見マリと離婚後の90年、西郷さんがデビューした翌65年生まれの明子夫人と再婚。年齢差があり、「ご両親の心配を解くことが先決でした」と結婚会見で明かした。

 17年に前立腺がんの再発を公表した際は「完全復活した姿で、歌と芝居のパフォーマンスをご披露できるよう」と誓ったが、願いはかなわなかった。

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