舟木一夫 御三家は「宝物」 “戦友”西郷輝彦さん訃報に涙
前立腺がんのため20日に死去した西郷輝彦さん(享年75)の訃報を受け、歌手の舟木一夫(77)が22日、栃木県の宇都宮市文化会館でのコンサート前に取材に応じた。西郷さん、橋幸夫(78)と共に「御三家」として一時代を築いた舟木。長年にわたりしのぎを削った年下の“戦友”を「同じ時代を生きた仲間」と涙ながらに語り、ステージ上から天国へ歌声を届けた。
舟木が“戦友”へのあふれる思いを口にした。どういう言葉をかけたいか、という問いに「お疲れさまですよ」と悼み、「第三者から見てしのぎを削っていたような頃があった人というのは、何十年かがたってみると、やっぱり宝物なんだよね…かけがえがないんだ」と涙を拭った。
訃報が届いた前夜は「4時頃まで寝られなかった」と、在りし日の姿を探し求めた。だが「思い出そうとするんだけど、ピントがぼけちゃって。それが今も続いているというかね。だから言ってみれば悲しいとかさみしいとかそういう感情ではなくて、体の中からスッとひとつ持ってかれたような」とショックを口にした。
昨春、西郷さんが治療のため滞在していた豪州からの電話が最期の会話になったという。「(帰国したら)必ず一報を入れる、ということで『じゃあ、待っているよ』と。でも心待ちにしていた電話がかかってこなかった…。闘っていると思い、あえて電話しませんでした」と声を落とした。
「ここ2年ぐらいの間で7、8回電話で話をして」と交流を続けてきた2人。2020年12月には都内で2人きりで中華料理を囲んだ。「異口同音に言ったのは、時間がたってみると、俺たちはライバルじゃなかったねって。誰にも負けたくないって。全部ひっくるめて同じ時代を生きた仲間なんですよね」。青春時代の関係性を互いに認め合った充実の時間を振り返った。
20年3月に開催予定だった西郷さんの55周年コンサートに友情出演することが決まっていたが、コロナ禍による2度の延期の末、開催は実現せず。「彼は悔しがっていた」と明かした。
ステージに向かう心境を「僕の中では、今日来てくださったお客さまプラス1という思いでね」と打ち明けた舟木。ファンの前で別れに言及することはなかったが、魂を込めた熱唱を天国の西郷さんに届けた。