西村京太郎さん死去 鉄道網が小説の源泉 座右の書は時刻表
「十津川警部」シリーズなどトラベルミステリーの第一人者として知られる作家の西村京太郎(にしむら・きょうたろう、本名矢島喜八郎=やじま・きはちろう)さんが3日午後5時5分、肝臓がんのため神奈川県湯河原町の病院で死去した。91歳。東京都出身。葬儀は近親者で行った。後日、お別れの会を開く。喪主は妻・瑞枝(みずえ)さん。関係者によると、昨年末から体調を崩し、入院していたという。
新幹線からローカル線まで、全国各地に張り巡らされた鉄道網こそが尽きない小説の源泉だった。新型車両、新路線には必ず乗りに行く筋金入りの鉄道ファン。西村さんは全ての都道府県を舞台に物語を紡いだ。座右の書は時刻表。新しい路線が登場するといち早く作品に取り入れた。
デビューから10年以上、鳴かず飛ばず。そこで当時、子どもに大人気だったブルートレインに目を向けた。実際に列車に乗って、東京から鹿児島まで一睡もせず綿密に取材して「寝台特急殺人事件」(78年)を発表。鉄道旅行をPRする旧国鉄の「いい日旅立ち」キャンペーンも同年スタート。警視庁捜査1課の十津川警部が全国を飛び回り、読者の旅情をかき立てるトラベルミステリーは時代のムードに合致した。
何より愛したのは、旅をゆっくり味わえる寝台列車やローカル線。「新幹線やジェット機の旅には夢がない。その点、寝台特急の旅には、日常の中で忘れてしまった夢がある」と語っていた。