「戦争やめて」生放送中に乱入 ロシア政府系TV社員が紙掲げ抗議
ロシアの政府系テレビ「第1チャンネル」で14日夜、ニュース番組「ブレーミャ」の生放送中に同テレビ局の女性社員がキャスターの背後で「戦争をやめて」などと書かれた紙を掲げた。ロシアのウクライナ侵攻への異例の抗議行動。女性社員は拘束されており、ロシア軍の活動を侮辱する行為として処罰される可能性がある。女性社員は日本時間15日午前にSNSで公表された動画で「狂気を止められるのは私たちの力だけだ」と訴えた。
女性はテレビカメラに向かい「戦争反対」と叫び、「プロパガンダを信じるな。彼らはうそをついている」などと書いた紙を広げた。テレビ局は女性登場の約5秒後、別の映像に切り替えた。
人権団体「OVDインフォ」によると、女性はマリーナ・オフシャンニコワさん。日本時間15日午前にツイッターで公表された事前収録とみられる動画で、番組で勤務していた経歴に触れ、プーチン政権のプロパガンダに加担し、自身を恥じていると吐露。
「この狂気を止められるのは私たちの力だけだ。(抗議)集会に行こう。何も恐れることはない。(当局は)全員を拘束することなどできないだろう」と訴えた。父親はウクライナ人、母親はロシア人だと説明し「今、ウクライナで起きていることは犯罪。ロシアは侵略国だ」と強調。責任はプーチン大統領にあると批判した。
ロイター通信によると、ペスコフ大統領報道官は15日、女性の抗議を「野蛮行為」と呼んで非難。タス通信によると、同テレビ局は「職務上の調査を行っている」と声明を発表した。
ネット上では抗議に共感する声が広がった。ロシア出身のピアニスト、イゴール・レビット氏は「驚くべき勇気の持ち主だ」とツイッターに投稿。
ウクライナのゼレンスキー大統領は14日のビデオ演説で「真実を広めることをやめないロシア人たちに感謝している。第1チャンネルのスタジオに現れた女性にも」と述べた。
「OVD-」によると、2月24日の侵攻以降、ロシア国内では約1万5千人が拘束された。ロシアでは当局がウクライナでの軍事作戦を「侵攻」や「戦争」と表現しないようメディアに求め、ウェブサイトからの削除を指示している。