「最終日に監督が号泣」ドライブ・マイ・カー撮影秘話 ロケ地・広島に深いリスペクト

 映画の祭典「第94回アカデミー賞」に4部門ノミネートされ、27日(日本時間28日)の授賞式で快挙が期待される「ドライブ・マイ・カー」。全編の3分の2ほどが撮影されるなど、主な舞台となったのは広島県だった。作品を同所に導いた広島フィルム・コミッションの西崎智子さんに撮影秘話を聞いた。

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 広島が舞台となったのは西崎さんの一言がきっかけだった。コロナ禍で韓国・釜山での撮影が難しくなり、福岡など複数の候補地を回る中で20年9月中旬に濱口竜介監督(43)らが広島を訪れた。監督が「広島で撮るのは、自分にはまだ早い」と話していたことから当初、ロケ地には選ばれないと感じていたと西崎さんは振り返る。

 「面白い場所を紹介してほしいと言われたんですが、まだ台本がなかったので、どう作品に寄り添っていいのか分からなかったんですね。そこで大好きな場所だった中工場に行き、平和の軸線の話をしました」

 作中に象徴的に登場するゴミ焼却施設「中工場」は、慰霊碑と原爆ドームを結ぶ軸線を遮らないよう2階が吹き抜けになっている。エピソードを聞いた濱口監督は「ゴミ工場にまで平和の理念があるのか」と感じ入り、広島で撮影する大きな決め手になったという。

 監督の広島へのリスペクトは深く、平和記念公園での撮影時にはスケジュール表に「とても大切な場所をお借りすることを忘れないように」と書き込まれていた。原爆慰霊碑との距離感から「これくらい離れていたら、撮影してもいいかな」と独りごちたことも。連日、深夜まで申請書を書き続け、撮影を見守った西崎さんは「最終日に監督が号泣されていて、びっくりしました。コロナ禍での撮影でもありましたし、それだけ思いが強かったんだと思います」と証言する。

 広島への注目度はネット上のロケ地マップに表れており、アクセスが急増中。当初は2カ月かけて7万ビューほどだったが、今では1週間でその数字を上回る。劇中の車「サーブ900」の原寸大パネルなどを展示する催しも好評だ。

 濱口監督はアカデミー賞ノミネート後のオンライン会見で「打ちひしがれている人間が希望を見つけようとする物語を、広島が導いてくれた」と感謝した。西崎さんは「授賞式のステージが楽しみです。心から拍手を送る準備をしています」と快挙を祈っている。

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