藤子不二雄(A)さん評伝 ブラックユーモアで漫画界に新風
藤子不二雄(A)さんは、子ども向けから青年コミックまで、独自のブラックユーモアで漫画界に新風を吹き込み続けた異才だった。
キャラクターが年を取らない永遠の少年漫画「ドラえもん」を描く親友の藤子・F・不二雄さんに対し、「人間の持つマイナーな欲望」に興味を持つ藤子(A)さんは大人向けの「笑ゥせぇるすまん」(当初の題名は「黒ィせぇるすまん」)を発表。2人は異なる路線を走るようになり、共作は「オバケのQ太郎」が最後となった。
心理描写が的確で、ブラックユーモアの効いた藤子(A)さんの作品は、幅広いファンの心をつかんだ。コンビ解消後も「笑ゥ-」や「喪黒福次郎の仕事」などを手がけ、人間を観察する力と創作意欲は晩年まで衰えなかった。
作家柏原兵三さんの小説を漫画化した「少年時代」では、シンガー・ソングライターの井上陽水の主題歌がヒットした映画版の企画・製作を担当するなど、マルチな才能を発揮した。