知床観光船沈没事故 渡せなかったプロポーズの手紙 遺族が公表「嫁になってくれますか?」
北海道・知床沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU 1(カズワン)」が沈没し、14人が死亡、12人が行方不明となっている事故で、亡くなった鈴木智也さん(22)=北見市=の告別式が2日、実家のある帯広市内で行われた。智也さんが船上でプロポーズを予定していた女性=2日現在で行方不明=に宛てた手紙を遺族が公表。「これからも一生一緒についてきてください」とつづられていた。
親族によると、手紙は乗船のため斜里町ウトロの港に止められていた車の後部座席の下で見つかった。船から戻った後、サプライズで渡すため、隠すかのように。ティファニーのペンダントも一緒に見つかった。
手紙の中で、自身を「とと」、女性を「ゆっち」と呼び「ずっとずっと大好き」と愛する気持ちを率直につづった。手紙の最後では「嫁になってくれますか?」とプロポーズ。「7月7日に返事を待ってます」と記したこの日は智也さんの誕生日に当たる。
親族によると、建材メーカー勤務の智也さんは今年1月、転勤のため北見市で暮らし始めた。2階建てアパートの一室。2人の新生活を夢見るように、手紙には決意の言葉が残っていた。「環境が変っても俺が守るってゆっちは俺が大切にするって誓ったから」
1日の通夜と同様、告別式には友人らが駆け付け、最後の別れを惜しんだ。会場前では、2人が旅行で小樽市などを訪れた際、SNSに投稿した動画が流されたほか、智也さんが好きだった車やバイクの写真も飾られた。
冷たい海で見つかった智也さん。式の最後で、親族らが「温かい服を着せてやりたい」と用意した新品のダウンジャケットがひつぎに納められると、参列者からはすすり泣きが漏れた。